2020年12月20日日曜日

コロナ禍と忘年会

 「教員記事」をお届けします。今回の寄稿者は、哲学・倫理学の林誓雄先生です。


 忘年会のシーズンである(書き出しが、毎年同じような気が…)。しかし、ご存知の通り、コロナ禍のため、我々国民は旅行自粛や会食自粛の日々を送っている。その一方、国民の模範となるべき(?)某首相は、少なからぬ人数での会食を行う日々を過ごしているようだ。もちろん、国民として、自身の自由を犠牲にして他者に迷惑や危害を及ぼすのを避け、他者の、そして自身および自身の大切な人たちの命を守る行動を取ることは、至極当然のことであり、それこそ倫理的にも妥当なことだと思われることだろう。倫理学者児玉聡は、コロナ禍における社会による個人の(行動の)自由の制限について、それが次のように正当化されると主張している。

あなたが確実に別の人に感染症をうつすというわけではないが、あなたを含め、あなたと似たような状況にある人口集団が自由に行動したならば、一定数の人が感染症にかかって重症ないし死ぬリスクがあるから、あなたには協力をしてほしい。自発的に協力できないならば、人々の健康や生命を守るためにあなたの協力を強制的に求めることも正当化されうる。(児玉[2020])

このように、人々の健康や生命を守るために、「生存」という価値を理由・根拠として、哲学的・倫理学的な見地から、個々人の「飲み会に行く自由」の制限が正当化され、そしてひたすら「忘年会を開催する自由」という価値が、「生存」の価値によって制限される状況が続いている。

2020年12月7日月曜日

アフリカの河童

「教員記事」をお届けします。今回の寄稿者は、文化人類学の中村亮先生です。


 4歳の息子が「妖怪」にはまっている。アニメの「妖怪ウォッチ」や「ゲゲゲの鬼太郎」がきっかけであろう。家の本棚にあった『妖怪ひみつ大百科』(村上健司、2015年)を見つけ出して、ページがボロボロになるまで読んでいる。そんな姿は、妖怪に憑かれているかのようだ。

 私も昔から妖怪に興味があった。今の息子と同じくらいの歳に河童を見たことがあるからだ(正確には池から勢いよく出てきた何かに驚き、すぐに逃げ出したのでその姿は見ていないが…)。そこで、より専門的な『日本妖怪大全』(水木しげる、2014年)を息子に買い与えたところ、妖怪好きに拍車がかかり、暇さえあればページをめくっている(図1)。4歳児には難しい漢字があるので読み聞かせるうちに、私もあらためて妖怪の面白さに魅せられてしまった。

 

図1.一反木綿の手ぬぐいを頭に巻いて妖怪勉強中の息子

2020年11月11日水曜日

天の色は何色?-漢和辞典を読む:「玄」字について-

 「教員記事」をお届けします。今回の寄稿者は、中国哲学の中村未来先生です。



『角川新字源(改訂新版)』(研究室備品)

 難読漢字で知られる「玄人」。「素人」の対義語として、読みと意味とをそのまま暗記している方が多いのではないかと思います。ただし、「玄」字が使用された別の熟語「玄米」とその対義語「白米」とを考えた時、「玄」という文字の意味がなんとなく理解できるのではないでしょうか。そう、「玄」には「黒」という意味があるのです。漢和辞典を開けば(注1)、「玄鳥=つばめ」「玄魚(あるいは玄針)=オタマジャクシ」「玄的=付けぼくろ」と、黒色にまつわる様々なものが「玄」字で表現されていることに気付きます。

 ところで、皆さんは天(空)と言えば何色だと思いますか?五経の1つである『易経(周易)』坤・文言伝には、「天は玄(くろ)にして、地は黄なり」と天の色も「玄(黒)」だと記述されています。私たちは、天(空)の色と言われるとすぐに「青空」や「夕焼け空」を連想してしまいがちですが、古代の人々はより混沌とした複雑な天の様子を「玄」字で表現したのかもしれません。

2020年9月15日火曜日

「悲心の器」と「悲の器」

 「教員記事」をお届けします。今回の寄稿者は、宗教学の岸根敏幸先生です。


 私は文化学科の専門科目で「宗教文化論」(旧カリキュラムでは「アジア宗教文化論Ⅰ」)の授業を担当しており、その授業で扱っているテーマの一つとして「仏教における業と輪廻」というものがあります。このテーマで中心になっているのは地獄です。地獄というものが、様々な宗教で語られている通りに存在していると思っている人は、(私を含めて)そう多くはいないでしょうが、それでも、地獄について考えることには、生きるということの本質につながるものがあるのではないかと、強く惹かれるのです。それについては授業でも多少話していますし、機会があれば、ある程度まとまった文章を書いてみたいとも思っています。

 それはともかくとして、授業でこの地獄を説明する際に典拠としているのが、平安時代中期に活躍した源信の著書『往生要集』です。この書は、極楽浄土への往生について、様々な仏典の記述を渉猟して、要点をまとめているのですが、注目されるのは、冒頭から、これでもかと言わんばかりに、地獄のおぞましさを延々と描き出している点です。端的に言えば、地獄をはじめとする六道輪廻がこんなにもひどい場所なのであるから、できるだけ早く立ち去って、極楽浄土に往生しなさい、という論理なのですが、地獄のおぞましさについて、微に入り細に入り、執拗(しつよう)なまでに描き出そうとする異常さに圧倒されるのです。

2020年9月8日火曜日

おじさんの十字架

 「教員記事」をお届けします。今回の寄稿者は、社会学の開田奈穂美先生です。


こんにちは、2020年4月に着任した開田奈穂美です。私は大学入学以降の15年ほど東京で暮らしていましたが、元々出身は長崎県長崎市(旧外海地区)です。今回は自己紹介も兼ねて、私の実家で起こったちょっとした出来事について書いてみたいと思います。

私の実家がある長崎市の旧外海地区は、長崎市の中心部から車で一時間ほどかかる場所にあります。旧外海地区の一部の集落は、2018年7月に「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連施設」として世界遺産に登録されました。世界遺産に登録された集落からは外れていますが、私が住んでいた集落にも、多様な宗教的バックグラウンドを持つ人たちが暮らしています。まず、キリスト教が禁止されていた時代から「隠れキリシタン」として密かに信仰を持ち続け、今でも独自の信仰を守っている人たち。そして明治に禁教の時代が終わって以降、キリスト教徒として教会に通っている人たち。そして隠れキリシタンやキリスト教徒を先祖に持ちながら、現在では仏教徒としてお寺の檀家になっている人たちです。

2020年9月2日水曜日

古代哲学における「意志の弱さ」(模擬講義)

  今回は哲学の岩田直也先生による模擬講義の映像をご紹介します。残念ながら2020年のオープンキャンパスは中止になってしまいましたが、福岡大学でどんな講義が行われているのか、ちょっと覗いてみましょう。

2020年8月26日水曜日

オンライン・オープンキャンパス

 今年、残念ながら中止になった 福岡大学オープンキャンパス2020。その代わりには足りないかもしれませんが、人文学部文化学科のHPを探検してください。HPにこれだけの内容を持つ学科は他にはあまりありません。
きっと文化学科の魅力に気づくはずです!

探 検1 どんなひとが文化学科に向いている?

 Q1.文化について幅広く学びたいですか?  YESNO
 Q2.社会のあり方・あるべき姿に関心がありますか?  YESNO
 Q3.人の心のメカニズムについて考えたいですか?  YESNO
 Q4.人の生きる意味を考えたいですか?  YESNO
 Q5.ものごとをいろいろな角度から考えることが楽しいですか?  YESNO


探 検2 文化学科でどのようなことを学ぶ?

 そもそも文化学科って? と思っているあなたはこちらへ。
 文化学科には大きく分けて7つの領域があります。それぞれの中身を知りたいあなたはこちらへ。

哲学・倫理学    宗教学     芸術学・美術史
社会学       心理学     地理学      文化人類学・民俗学

 文化学科ではどんな授業を受けられるの?と思っているあなたは、哲学の岩田直也先生による模擬授業の動画もぜひご覧ください。