2019年8月29日木曜日

日本神話にまつわる小話:八塩折酒のこと


「教員記事」をお届けします。今回の寄稿者は、日本の神話と宗教、仏教、インド哲学の
岸根敏幸先生です。




 お酒の力はすごい。なにしろ、あのヤマタノヲロチでさえ酔い潰してしまったのだから。

 そのお酒は古事記神話では「八塩折酒」と呼ばれています(日本書紀神話では「八醞酒」。ただし、果実酒や毒酒と捉える伝承もあります)。読み方は「やしほをりのさけ」ですが、yashihoworiということで、ア行の「オ」とワ行の「ヲ」という母音が連続するので、母音縮約が起こり、yashihori、すなわち、「やしほり」と読むことも可能です。「八」は、文字通り8という数を表す場合もありますが、日本神話では「多くの」という意味で使われる場合もあります。「塩」は塩ではなく、「回」「度」と同様に回数を表す助数詞です。「折」(終止形は「をる」)は、本来「折り曲げる」「折り取る」という意味のようで、ちょっと意味がとりにくいですが、「白波の八重折るが上に」(『万葉集』4360番)という表現もあるので、折り返す、つまり、また元に戻るということで、繰り返すことを意味すると考えてよいでしょう。ですので、八塩折酒というのは、醸造の行程を何度も繰り返すことによって造られたお酒ということになります。
 このように何度も醸造されて、ヤマタノヲロチを酔い潰したようなお酒ですから、飲んだら火を吐くほどに、アルコール度数の高い強烈なお酒というものを想像してしまいます。実際そのように説明している書籍もあるでしょう。しかし、実はそうではないのです。
 お酒(ここでは日本酒のことです)は、米と水を主な原料とし、麹カビによって、デンプンをブドウ糖に分解する行程と、酵母菌によってブドウ糖を分解してアルコール発酵する行程を通して、造られます。この二つの行程が同時進行する(これを「並行複発酵」と言います)のが日本酒醸造の特色なのです。
 八塩折酒はこの醸造によってできたお酒を水の代わりにして、さらに醸造することを繰り返すのです。何度もアルコール発酵させるのですから、さぞアルコール度数は高くなると思いがちですが、酵母菌は自分が作ったアルコールの濃度が高くなると、発酵活動を停止し、死滅してしまうのです。ですので、水の代わりにお酒を使用すると、元々アルコール濃度が高いので、酵母菌のアルコール発酵は抑制されてしまい、麹カビが作るブドウ糖が増えていくのです。したがって、八塩折酒というのはアルコール度数の高い強烈なお酒なのではなく、とても甘い、ジュースのようなお酒であったと考えられます。ヤマタノヲロチが酔い潰れてしまったのも、あまりにも甘美なお酒だったので、無我夢中になって、八つの頭が同時にお酒を飲み続けたからだったのです。
 かつて出雲の国であった島根県松江市に、この八塩折酒を再現したお酒を造っている蔵元があります。日本神話の研究に携わる者として、八塩折酒の味も知らないでどうするという思いから、インターネットで購入したことがあります。最初の一口の印象ですが、辛口のお酒が好きな私にとっては、「これはどうなんだろう。ジュースのように甘いな」という感じでしたが、その後、時間を置いて、そのような甘いお酒なんだと思って飲めば、それはそれで味わえるものでした。
 しかし、造るのになんと手間のかかるお酒でしょうか。すでに出来上がっているお酒を水代わりにして仕込みに使い、また醸造するのです。こういう形で、仕込みに使う水の代わりにお酒を用いたり、予め水にお酒を混ぜたりして造るお酒は「貴醸酒」と呼ばれています。名前の通り、とても贅沢なお酒です。なぜなら、ほとんどタダに等しい水に代わってお酒を使うのですから。
 スサノヲに命じられて、そんな手間のかかるお酒を大量に造り上げたアシナヅチとテナヅチという老夫婦の働きは見事と言うしかありません。これは単にスサノヲの命令に従ったからというのではなく、ヤマタノヲロチに娘たちを喰われ続け、唯一生き残っていた娘であるクシナダヒメの命を何とか助けようと必死だったからでしょう。
 なお、ゴジラ映画で新境地を開いたとも言える「シン・ゴジラ」には「ヤシオリ作戦」というのが登場します。これは、血液凝固剤をゴジラの体内に大量注入して、血液の循環を停止させ、それによってゴジラを凍結させてしまうという作戦なのです。はるか昔の日本神話に登場する、ヤマタノヲロチを酔い潰して、退治する機会を作った八塩折酒が、現代の映画で装いを新たに登場しているのです。

韓国文化の魅力

LC17台 笠原 唯

みなさん、こんにちは!人文学部文化学科3年の笠原唯です。
今回は「韓国文化の魅力」について紹介してみようと思います。

最近では、NHKの「紅白歌合戦」に人気の韓流スターが出場するようになりました。中でもTWICEの「TTポーズ」が女子中高生に流行したのは記憶に新しいのではないでしょうか。民間のテレビでも連日韓国ドラマが放送されています。

他にも東京では、「新大久保」が注目を浴びていて、「韓流の聖地」とも呼ばれています。ここは、韓国からの直輸入商品が豊富に売られています。福岡でもキャナルシティーや川端商店街などに韓流グッズのお店があります。

また、韓国料理店も増加しています。天神では、今からの季節に欠かせない、かき氷がメインのお店「ソルビン」が大変人気となっています。

今、日本では「第3次韓流ブーム」とも言われています。今年3月には訪韓者数が375千人と過去最高を更新しました。韓国は位置的にも日本と距離が近く、時差もないので、初めての海外旅行先に選びやすい国だと思います。

そこで、まず韓国を知るためにも、日本にはない韓国独特の文化について調べてみました。

1.生活文化
日本では日常的に「湯船に浸かる」習慣があります。しかし、韓国では浴槽がない家が多く、シャワーのみで済ませます。夜は軽く顔や足を洗い、朝、シャワーを浴びるというのがパターンのようです。

2.年齢の数え方
日本では「満年齢」で数えます。生まれた時を「0歳」とし、1ヶ月過ぎると生後1ヶ月、1年過ぎると1歳になります。誕生日が来るまでは年を取らない数え方です。一方、韓国では「数え年」で数えます。妊娠中から数えるので生まれた日を「1歳」とし、11日に国民全員が1歳年をとります。年齢が変わるタイミングは、誕生日ではなくお正月です。例えば、1231日に生まれた場合、1231日は1歳、次の日の11日が2歳となります。

3.韓国のパトカー
日本は車体の色が黒と白、警光は赤ですが、韓国は白ベースに青と黄のライン、警光灯は赤と青となっています。(以前は水色ベースに白でしたが、創設60周年を記念して新しくなりました。)


4.交通事情
自動車は日本とは逆の右側通行で、タクシーも日本と比べて明らかに安い料金で乗車できます。

5.食文化
日本では焼肉は「牛肉」が主ですが、韓国では焼肉といえば「豚肉」というように、食の感覚も違います。また、韓国といえば「キムチ」。年に1回親族が集まり「キムジャン」といって1年分のキムチを作ります。

どうでしょう。韓国に興味が出てきましたか?
私は、韓国の人気の秘密を体感するため、春休みを利用してソウルへ旅行に行ってみました。

〈明洞〉
日本人が多く訪れる明洞では、若者に人気のファッション専門店やコスメショップがあり、東京の原宿のような街並みです。案内札を下げたガイドさんに目的地がわからず道を訪ねたところ、日本語が上手で驚きました。立ち寄ったお店でも日本語が飛び交っていて、まるで日本にいるような不思議な感覚でした。

〈弘大〉
弘益大学が近くにあり、学生が多い街でお店も明るく元気なイメージです。最初に目にとまったのが、伸びるチーズで話題になっている〈セイチーズ〉です。初めて韓国語を使って注文に挑戦しました。「チジュ ハナ ジュセヨ~」。少々緊張しましたが無事オーダーでき、セイチーズ片手に観光。「ビヨーン」と20cmくらいチーズが伸び、味はコクがあって美味しく、人気があるのにも納得しました。


街中には、赤い制服を着たガイドの方がポイントに立っており、日本語が上手で何度か場所を教えてもらい、スムーズにショッピングが楽しめました。

韓国で人気のキャラクターが販売されているKAKAO FRIENDS SHOPLINE FRIENDS SHOPは、日本に比べ商品の種類が多く、価格も安いのでつい買ってしまいます。福岡でもLINE FRIENDS CAFÉ STORは天神西通りにオープンしています。
      

夜は若者の街のイメージ通り、街頭でK-POPを目指す若者たちが、グループで本気のダンスを披露していました。1つの通りで3ヶ所に分かれ、周りをファンが囲む形で、盛り上がりをみせていました。少し覗いてみたところ、日本人の方、手をあげてくださいなどと歓迎ムードで、ミニコンサート並みの動きの揃ったキレのあるダンスに魅了されてしまいました。


食事は、店員の方がテーブルサイドにずっと付いて豚肉を焼いてくれる、独特な雰囲気のあるお店へ行きました。料理の量も多く、価格も安く満足できました。

〈コンデ〉
街には、たくさんの露店が並んでいました。福岡の人が屋台を囲み談話を楽しむというイメージではなく、ちょっと手軽なお祭りの露店のような感覚でした。

日本でも人気のスターバックスコーヒー、韓国ではどうでしょう?

まず容器がプラスチックではなく、大きめなガラスのグラスで量も多めで、得した気分になりました。ここでも前に並んでいたお客さんは日本人でした。この旅行期間、日本語を聞か




ない日はなく、少々安心感は持てました。


コンデはショッピングも比較的安い価格で購入でき、おすすめな場所の一つです。

以上、韓国文化を満喫した感想は、自分自身も韓国商品に触れたり、実際に安い価格で豊富に購入できることで、今まで以上にオシャレが試せて、オシャレ感覚が自然と身につき、良い刺激になったように思いました。男女問わず自分のセンスアップにつながる感覚が人気の秘密ではないでしょうか。たくさんの韓国の魅力に触れることで人生観の幅も拡がり、色々な可能性も引き出せそうな感じがしました。

福岡大学の人文学部文化学科では、心理学、哲学、宗教学、社会学、文化人類学、地理学、芸術学など色々な分野について学ぶことができます。また、第2外国語の履修が必須条件で、韓国語も選択肢の中に入っています。最近ではグローバル化に伴い、語学力も必要となってきています。文化学科は他の学科と違い、特定の専門分野だけを学ぶのではなく多様なジャンルの学問を修得でき、自分の興味のある分野を見つけることができる点で、魅力的な学科だと思います。

自分の中にある可能性を、文化学科で引き出してみませんか?