2019年11月18日月曜日

令和元年度 卒業論文発表会開催のお知らせ

 下記の日程で、今年度の卒業論文発表会を開催します。

 日時 1月29日(水)13:00~16:00 ※開催時間は若干変更の可能性あり
 場所 文系センター棟15階、第5,6,7会議室

 詳しい発表形式やプログラムなどについては、改めて後日、このブログ上で告知します。四年生はもちろん、一年生から三年生の皆さんもぜひ会場へ足を運び、先輩方の研究成果を確認してみて下さい。

 何か不明な点があれば、教務連絡委員の林か藤村まで。

卒業論文発表会関連記事
 平成27年度卒業論文発表会
 平成27年度卒業論文発表会に参加して
 平成28年度卒業論文発表会が行われました
 卒業論文発表会に参加して
 平成30年度卒業論文発表会が行われました

2019年11月15日金曜日

海女がつくる里海

「教員記事」をお届けします。今回の寄稿者は、文化人類学の中村 亮先生です。


中村亮

日本に特徴的な沿岸資源の利用・管理として「里海」がある。これは、里海研究の第一人者である柳哲雄氏によると「人が手を加えることにより生物生産性と生物多様性が高くなった沿岸海域」のことである。人が資源を利用することでかえって自然が豊かになるのだ。
里海の事例として、沖縄や九州地方の「石干見(いしひみ)」がある。石干見とは、干満差の大きい沿岸部に岩を馬蹄型に積んでつくった漁具である。干潮時に石干見内に逃げおくれた魚を捕獲する日本の伝統漁法である。沿岸に積まれた岩の隙間を棲み処として新たな生物が石干見周辺に増えることで、生物多様性が促進されるというわけだ。
このような、人と自然とが密接にかかわる里海を、福井県の海女文化に探していた。私が福井県里山里海湖研究所の研究員であった20142018年にかけてのことである。私の大叔父が男海女(海士)だったこともあり、かねてから海女に興味をいだいていた。調査が少しずつ進むうちに、海女による里海的な資源利用を発見することがきたので、ここに紹介したい。
福井県坂井市三国町の雄島半島には、米ケ脇、安島、崎、梶の四つの海女村がある(図1)。四村合わせて54人の海女がおり、平均年齢は約702017年)と、海女の高齢化がすすんでいる。海女は、59月にかけて、ワカメ、サザエ、アワビ、ウニをとり、冬場に岩ノリをとる。漁期は福井県漁連によって定められているが、各海女村はさらに厳しいルールを「申し合わせ」によって独自に設けている。たとえば、県漁連の規定ではサザエは61日からとっても良いが、安島では625日をサザエの解禁日としている。とっても良いサイズも決まっており、小さいものはリリースされる。
このように、「とり過ぎない」ことで資源を管理するのも保全の方法である。しかし、私が着目していたのは、資源を「利用しながら守り育てる」という里海的資源利用であった。そして、そのような資源利用を、ウニ漁における「岩おこし」にみることができたのである。
安島ではウニ漁は毎年、722日から820日の30日間おこなわれる。しかし実際は、悪天候などにより、10日ほどしかウニ漁はできないという。とげの短いバフンウニは日中、岩と海底の隙間や岩下にひそんでいる。海女は岩をひっくり返しながらウニをとる。ウニをとるために岩をひっくり返すことは「岩おこし」と呼ばれる。海女は漁のあいだ岩おこしを何回もくり返す。もちろん岩おこしはウニをとるための行為であるが、このとき同時に、岩の上や海底との隙間に堆積した砂を取り払うことにもなる。ここに私は、里海的資源利用を見出すのである。
なぜならば、岩おこしで岩の表面に堆積する砂が取り払われることによって、海藻が岩肌に生えることができる。ウニやサザエの餌となる海藻の生長が促進されるのである。また、岩と海底との隙間にたまった砂が除かれることによって、ウニの生息場所も確保される。つまり、岩おこしというウニをとる行為が、同時に、ウニの餌を育て、ウニの生息環境を整備することにつながっているのである。これはまさに「里海」と呼ぶことができる資源利用ではなかろうか。
海女自身も岩おこしの効用をじゅうぶんに意識している。もしも岩おこしによる人為的な海のかく乱がなかったら、九頭竜川河口域に位置する漁場は砂で埋まってしまうだろう。河口域に最も近い米ケ脇の海女は「海も畑とおなじように耕さないとダメになる」ともいう。海女は、自分たちが沿岸環境を「守り育てている」という意識をしっかりともっているのだ。このような意識が、資源の持続的利用にとって必要なのである。
私は、沿岸の資源や地形認識、季節ごとの変化などの知識・知恵を所有し、資源利用の当事者であり、かつ、積極的に資源の管理にも努めている海女をふくむ漁民が、沿岸環境保全の主体者であるべきだと考えている。しかし近年、主体者であるべき漁民の存続が危ぶまれている。少子高齢化や担い手不足は、日本の沿岸漁業に共通の問題である。この問題を解決するためにも、まずは地域固有の沿岸資源利用についてしっかりと理解する必要があるだろう。そこには、海の豊かさを持続的に利用するために学ぶべき、先人の知恵と技術と思想があるからだ。



図1.福井県坂井市三国町の雄島半島の海女村


漁場に向かうベテラン海女
(安島にて、20167月中村亮撮影)



昔ながらの木の桶を使用したサザエ漁
(安島にて、20167月中村亮撮影)

「先輩と語る」開催のお知らせ

福岡大学ステップアッププログラムの一環として、下記の通り、「先輩と語る」というイベントを開催します。

 日時 2019年11月29日(金)18:00-19:30
 場所 A811教室
 講師 水落文佳 氏(日本語教師、LC15台、2018年度卒業)

水落文佳さんは小笠原ゼミに三年間所属し、宗教学を中心に学習。インドネシアに短期間滞在した経験などから宗教文化への関心を深め、東南アジアの宗教に関する卒論をまとめました。文化学科での授業と並行して、日本語教員課程を履修・修了。現在は福岡で日本語教師として働かれています。

この会では、まずは前半、水落さんから就職活動や現在の仕事のことなどについてお話しいただき、後半は参加者を交えて、自由な質疑応答を行いたいと思います。あまり堅苦しくならないようにするつもりですので、何となく卒業生の話を聴いてみる、気になっていることをちょっと質問してみる、という程度の気持ちで、ぜひ気楽にご参加を。

就活中の上級生などはもちろん、一年生の参加も歓迎。特に、日本語教師の仕事に関心を持っている人や、日本語教員課程の履修を考えている人などは、参加してみると良いかもしれません。文化学科以外の学生さんの参加も歓迎です

事前の登録などは不要。途中入室、途中退室も自由です。不明な点などについては、小笠原までお問い合わせ下さい。

徐々に寒さが増し始めるはずの頃、何か、温かい飲み物でも持参するのがおすすめ。

2019年11月5日火曜日

LC哲学カフェ開催:パレードとアートで哲学する


昨日、11月4日月曜、LC哲学カフェが開催されました。今回は下記二つのイベントに参加し、その後、六本松の某カフェで議論。参加者は学生さんが2名、他大学の学生さんが1名、教員が1名。

 九州レインボープライド2019
 https://9rp.biz/(外部サイト)

 公開講座「人と人との境界を問う――ダムタイプ《S/N》上映&トーク」
 https://9rp.biz/1661/(外部サイト)

公開講座の後のカフェに限らず、その時々に、様々な話題が出ました。パレード開始前の公園の芝生上で、このパレードの持つ「政治性」について考えたり、パレード後の食事中には、いわゆる「心の性」とは何かという問題や、同性婚や選択的夫婦別姓について議論したり、夜のカフェでは、今観た作品の感想や解釈について話し合ったり、等々。私個人は、カフェでの「未来のラブソング」に関する議論(異性愛を前提しない「未来のラブソング」とはどのようなものか?)が印象に残っています。

さて来月も、大学の外での哲学カフェ開催を予定しています。大学内での開催の場合と異なり、日程などについては予め、参加希望者の間でのみ相談・告知していますので、興味のある人は、小笠原まで気軽にご連絡下さい。