2021年10月29日金曜日

卒業生(LC17台)の石丸翔梧君が科捜研研究員に

「教員記事」をお届けします。今回の寄稿者は、心理学の大上渉先生です。


 先日,嬉しい報せが届きました。文化学科を今年3月に卒業した石丸翔梧君(LC17台)が大阪府警の科学捜査研究所の採用試験に最終合格したのです。来年(2021年)4月に大阪府警科捜研の人文科学研究室に配属され,文書鑑定担当の研究員になる予定です。文化学科の卒業生が科捜研の研究員として採用されるのは,私の着任以降,内山朋美さん(現・長崎県警科学捜査研究所研究員)に続いて2人目です。

 ドラマなどを通じて,ご存じの方も多いと思われますが,科学捜査研究所は,警視庁及び道府県警察本部の刑事部に設置されている,捜査支援のための鑑定・研究機関です。犯罪に関わる様々な証拠資料を検査・鑑定することで,犯人の特定や犯行立証の一翼を担います。

 科学捜査研究所には,取り扱う証拠資料の種類によって,様々な部門が存在しています。全国の科捜研に共通する部門として,法医(血液・唾液,毛髪,DNA型など),化学(覚せい剤,大麻,薬毒物,繊維など),物理(火災,交通事故,銃器,画像・音声など),文書(筆跡,偽造文書,偽造通貨など),心理(ポリグラフ検査など)が挙げられます。そのため科捜研で働く研究員のバックグラウンドも,化学,薬学,農学,生物学,工学,心理学など多彩です。

 石丸君が採用される文書鑑定部門では,筆跡(例,手書き文字の筆者識別)をはじめ,印影(例,文書に押されている印影の比較対照),不明文字(例,改ざんの有無・抹消文字の検出),偽造印刷物(例,偽造運転免許証や偽造旅券の真偽識別),偽造通貨などの検査・鑑定を行います。検査・鑑定を行う対象や検査方法が実にバラエティに富んでいるので,それぞれで求められる知識や技能も多岐に渡ります。

 文化学科に在学した4年間で石丸君が横断的に学んだ,心理学,社会学,文化人類学・民俗学,地理学,芸術学,宗教学,哲学・倫理学などの知見は,彼に広い視野や洞察をもたらし,鑑定にきっと活かされるものと信じています。


参考文献

長澤秀利(2012)警察における心理職 笠井達夫・桐生正幸・水田惠三(編)犯罪に挑む心    理学ver.2 ―現場が語る最前線―(pp.13-15)北大路書房

𠮷田公一(2004)ポイント解説 筆跡・印象鑑定の実務 東京法令出版

𠮷田公一(2001)文書鑑定人事件ファイル 新潮社



 

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