「教員記事」をお届けします。今回の寄稿者は、西洋近現代美術史、ドイツ美術の落合桃子先生です。
東京オリンピック競技大会の開催に伴い、今年は「海の日」が7月22日(木)に移動しました。翌23日(金)の「スポーツの日」と合わせ、4連休となりました(福大では5月に臨時休講があったため、祝日授業日になりました)。
「海の日」は、1995年に制定された国民の祝日で、1996年から始まりました。これを記念して「海の日」のシンボルマークが作られています。
折り紙の帆船をイメージしたもので、赤・青・緑の三原色と、太陽の光を意味する黄色が使われています。シンプルながらもインパクトがあります。記念切手も発行されました。これまでより早く夏休みになるのがうれしかったのか、「海の日」ができたことは、このシンボルマークとともに、鮮明な記憶として残っています。なお当初は7月20日でしたが、その後、7月第3月曜日に変更されています。
あれから幾年もの歳月を経て、ここ福岡で、「海の日」のシンボルマークを作った人に出会うことになります。薬院駅の近くに、昨年6月末、惜しまれながら閉廊した、宇久画廊というギャラリーがありました。アートコレクターの川上繁治さんがリタイア後に始められたスペースで、ご自身が本当に気に入ったアーティストを取り上げ、定期的に企画展を行っておられました。2014年、たまたまお伺いした展示で、あの「海の日」のシンボルマークを見ることになったのです。豊増秀男さんのポスター展でのことでした。
豊増秀男(とよますひでお)さんは、1931(昭和6)年、佐賀県の生まれで、RKB毎日放送に入社して番組のタイトルデザインなどの仕事に携わった後、1979年、48歳の時に、グラフィックデザイナーとして独立されました。自治体や企業のシンボルマーク・ロゴマークを多数手掛け、ポスターの分野でも活躍しました。「グリーンコープおねがい!」のCMが放映中のグリーンコープのロゴマーク、二人の人が手を取り合ったデザインの緑のロゴマークも、豊増さんによるものです。福岡国際女子柔道選手権大会のポスター(1983年)も制作しました。ワルシャワ国際ポスタービエンナーレをはじめとする、国内外のコンペやコンクールにも精力的に出品を重ね、入賞・入選を果たしてきました。「海の日」のシンボルマークも、9,823点の応募作のなかから、最優秀賞に選ばれたものでした。
宇久画廊での展示がきっかけとなって、展覧会「グラフィックデザイナー豊増秀男 かたち・時代・ユーモア」(2015年9月12日~10月25日)を九州産業大学美術館で開催しました。ポスターやシンボルマーク、風刺漫画など100点以上を展示し、初期から最近までの豊増さんの仕事を紹介しました。小冊子ですが図録も制作することができました。
3年前の2018年初夏、ご家族からお葉書が届き、豊増さんがお亡くなりになったことを知りました。展覧会とカタログを通じて、豊増さんの作品を、多くの人に、そして未来の人に知ってもらうためのお手伝いが少しでもできたのであれば、学芸員、そして美術史家として、ささやかながら役目を果たすことができたのはないかと思っています。
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