2015年1月16日金曜日

文化学科で学ぶ意義 (平兮元章教授)

「教員記事」をお届けします。第十八回は社会学の平兮元章(ひらなもとのり)先生です。

世界的ベストセラーとなり,日本でも反響をよんでいるトマ・ピケティ「21世紀の資本」を引用し,本学文化学科で学ぶ意義を述べられています。




 世界的なベストセラーとなっているトマ・ピケティの『21世紀の資本』(みすず書房、2014年)において、彼は「民間資本収益率が所得と産出の経済成長率を上回る事態が長期にわたっている今日、このままでは資本主義は持続不可能なさらなる貧富の格差を生み出し、民主主義社会やそれが根ざす社会正義の価値観が崩壊する危機にある」と警告を発しています。

 他人事では済まされないこのような状況において、文化学科に所属する教員・学生・入学を希望する人びとにとって何ができるでしょうか。例えば、異常な利子の低下をすぐに是正する権限などわれわれにはありません。ピケティは「この危機に真剣な関心をもって格差是正の方法を見いだす取り組みをしなければ、最貧困層の上向きの転換はありえない」と言っています。

 文化学科に入学することの利点あるいは強みとして常に用意されてきた答えは「多角的な視点から物事を見ることができる」、「常識や固定観念にとらわれない広い視野と柔軟な発想力を身につけることができる」という一見抽象的で曖昧な宣伝文句です。このスローガンのもとで繰り返されている日々の授業や学習は無意味なもので、現実には役立つものではないのでしょうか 決してそうではありません。ピケティのいう資本主義の破綻や貧困、格差の問題に限らず、民主主義、社会正義、格差社会における生きる意味やそれの喪失と問い直し、都市・村落での生活と意味、そこでの人びとの意識・・・等々は文化学科で学び、検討・分析することのできるテーマでもあります。マクロからミクロにおよぶ事象について学ぶことができます。


 日々の生活において突きつけられている問題を真剣に考え、多角的な思考力・創造力を養っておかなければ、何らかのアクションをおこすことはできずに、ただ流されて生きるだけになってしまいます。今は社会の中で責任をもって生きることのできるさまざまな力を養いましょう。

                                                     平兮元章

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