「教員記事」をお届けします。第八回は地理学の鴨川武文准教授です。
大学(人文学部)で学ぶということ-役に立つ学問とは何か-
私の専門領域は地理学の中でも人文地理学と呼ばれる領域です。人文地理学とは、地表の人文現象を研究対象とする、地理学の一分野です。私が地理学に興味を持つに至った背景や大学で学ぶということについて、経験・体験をふまえて述べてみたいと思います。
私が地理(地理学)に興味を持ったのは中学校時代でした。現在でもそうだと思いますが、地理を本格的に学ぶのは中学校1年生になってからです。私の中学校時代の地理担当の先生は森先生でした。現在とは違ってインターネットのない時代に統計や図表などを駆使して、世界について、日本について、森先生は生徒たちに、地域のさまざまな事象に興味を持たせるような授業をしてくださいました。地理を勉強すると、知らない地域について知ることができる、楽しいことに巡り合うことができるような気がする、このような気持ちに駆り立てられました。要するに地理(地理学)に興味を持ったのです。これは高校時代になっても変わることはなく、大学で地理(地理学)を勉強したいと強く思うようになりました。

大学に長く奉職しているとさまざまな変化を経験することになりました。教える立場からすると、以前にはなかった学生の皆さんによる授業評価はその一例でしょう。学生の皆さんが履修している科目の授業評価アンケートをみると、「役に立つ授業をして欲しい」という意見が多くあります。それでは「役に立つ授業・授業内容」とはどのようなものでしょうか?「役に立つ」というのは、何かの目的にとって有用であるということができると思います。たとえば、「就職に役に立つ」「公務員採用試験や教員採用試験に役に立つ」などがそうでしょう。では、皆さんが登録をした様々な授業科目はどのように役に立つのでしょうか。

人文社会科学は、一般に「虚学」と呼ばれることがありますが、「虚学」と対になるのが、世の中に直接的に役に立つ医学や工学などの「実学」です。私は両者は対立するものではなく、車の両輪のようなものであると考えています。
私たちは科学技術によって物質的な豊かさを実現できましたが、一方で、豊かさを求めたあまり、さまざまな環境問題が生じましたし、今日、それらが人間の生存をすら脅かしていることも事実です。一方で、環境問題を解決するために科学技術に依存せざるを得ないこともまた事実です。しかし、環境問題の背後には、人間のあり方や社会の仕組みが複雑に絡み合っており、これを科学技術で解決することは困難です。今日の世界を揺るがしている民族紛争、宗教対立、文化摩擦などの問題となれば、なおさら科学技術で解決することはできないでしょう。だからこそ人間の本性や社会の仕組みを解明する人文社会科学の存在意義があるのです。
長々と書きましたが、結局、結論はどこにあるのでしょうか。それは明確です。役に立たない学問はないということです。でも、今すぐには役には立たないでしょう。長い時間をかけて学生の皆さんの血となり肉となるのです。
0 件のコメント:
コメントを投稿