林先生は講義の冒頭、「いやぁ、まだまだ地球って寒いよね、もっと温かくなってもいいよね。地球温暖化万歳じゃない?」と挑発的な態度に出ます。さらに、「そもそも、どうして私たちは地球環境を守らないといけないのだろうか。今や別の惑星をテラフォーミングすることが現実味を帯びてきているのだから、地球の環境がダメになったら、宇宙に出て、どんどん宇宙で使える星を見つけて、人類の存続を図った方がかしこいんじゃないの?」とたたみかけます。もちろん、それは学問的な挑発。そして、新入生には、この林先生の挑発的意見に、どうやって「論理的に」「正当な根拠をもって」反論するか、ということが課題として出されました。
一方、藤村先生の講義は、最近テレビでよく見る県民性というのは、信用に値するのかという問いかけから始まりました。山陰は日照時間が少ないから、陰気な性格になりやすい、というけれど、じっさいの日照時間を調べたら・・・とマスメディアを賑わす疑似科学を暴く一面も。さらに、和辻哲郎の風土論も実証的なものではない、という指摘などもあったうえで、単に地形や気候だけでなく、地域の文化や宗教、産業や生活の様々な側面をデータに基づき多角的にみていく地理学の手法についての紹介されました。そして、新入生には日本の諸地域を地理学の手法で読み解き、そこから県民性として何が導出できるのか考えてみよう、という課題が出されました。
新入生たちは、グループごとにこの二つの課題のいずれかが割り当てられ、3時間に及ぶグループ討議と発表準備の時間が与えられました。図書館で資料を調べたり、ひたすらに議論したり、発表の形式に悩んだり・・・あっという間に時間は過ぎます。サポートの上級生の手を借りつつ、なんとかレジュメを作り終えたのは、どのグループもほぼギリギリの時間でした。
午後の前半は林先生の課題に当たったグループから、手書きのレジュメをスクリーンに映しながら発表をおこないました。そもそも、別の惑星をテラフォーミングするというけれど、それは一体どれくらいの時間がかかるのか、また金額はどれくらいになるのか、という実際的な問題から、地球の人すべてが移住した場合「国」という概念がなくなり、言語や文化の違いを越えて共生することには難しさがあるのではないかといった意見や、林先生がいうところの「姥捨山戦略」は対象を「モノ」のように扱っているが、地球は単なるモノなのか、という意見など。しかし、なかなか林先生にクリティカルヒットするものは出ず・・・、「人としてどうかと思う」という新入生のコメントも飛び出しました。
休憩を挟んで後半は、藤村先生の課題を担当したグループの発表となりました。宮城・静岡・大阪・山口が取り上げられ、それぞれ地形・気候・地域の成り立ちと歴史・産業形態などが紹介され、そこから県民性を探っていくという取り組みでしたが、一口に「県」といってもかなりの広がりを持つもので、統一的な県民性を見つけ出すということなかなか難しい課題だったようです。ただ、じつはそんなに簡単に統一的な特徴など存在しないんだ、ということがわかっただけでも学術的には大きな進歩だったのではないでしょうか。
最後の総合討議では、小笠原先生と一言先生の質問が呼び水となり、新入生の皆さんから積極的な発言が飛び出し、熱いバトルが繰り広げられました。学術的な議論とは、一体どういうものなのかを少しでも垣間見てもらえたとすれば、とても嬉しいのですが、どうだったでしょうか?
そして、ラストは新入生歓迎パーティー。一日勉強し尽くして疲れ果てた新入生の皆さまはともかくよく食べる(笑)美味しいご飯やケーキを片手に同級生や、先生たちとガイダンスゼミの感想(愚痴?)を言いつつ、笑いながら、あっという間に閉会の時間を迎えました。
新入生のみなさんは、まさに学問の扉を開けたところです。今回のガイダンスゼミがその指針になることを祈っています。
最後になりますが、この会を開催するにあたってサポートを担当してくれた上級生の皆さまに心より御礼申し上げます。
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