2017年7月24日月曜日

学生生活~ひとりでも楽しむには~(LC11台 北原楓さん)

 今年度第4回目の学生記事をお届けします。LC11台の北原楓さんが「大学生といえば、友達がいないと楽しめない」という考えに一石を投じたい、とひとりでも大学生活を楽しむための3つの方法紹介してくれました。



学生生活~ひとりでも楽しむには~
LC11台 北原 楓

 皆さんは、「ソロ活」という言葉をご存じだろうか。ソロ活とは、ひとりご飯、ひとり映画、ひとりカラオケ―――などといったような、ひとりで物事を楽しむ事である。自分のペースで、自分の好きなことを、自分で選んで出来ることが、ソロ活の魅力だ。

 大学生といえば、サークルに所属したり、アルバイトに勤しんだり、大学で出来た仲間たちと、楽しい青春を過ごすというイメージを持つ人も多いと思う。確かに、大学校内やその周辺地域では複数人で過ごすことを前提とした施設やサービスが充実している。それも大学生の生活の一面ではあるが、しかしながら、ひとたび別の視点を持ってみると、ひとりでも楽しめるような要素が、意外と多いことにも気づく。今回は、「大学生といえば、友達がいないと楽しめない」という考えに偏重しがちな昨今の状況に、一石を投じたい。私の考える、ひとりでも大学生活を楽しむ3つの方法を、この記事で紹介しようと思う。

1.お気に入りの場所を見つける

 誰しも、自分が落ち着く場所を持っているのではないだろうか。大学の中でも、自分のお気に入りの、リラックスできる場所を見つけられたのなら、より活き活きとした大学生活を送ることが出来るであろう。そんな場所を見つけるには、福岡大学はたいへん恵まれていると言っても過言ではない。福岡ヤフオク!ドームの、フィールド面積約45個分の敷地を有する福岡大学の中には、講義が行われる校舎をはじめ、図書館、食堂、売店など、様々な施設が設けられている。また、大学周辺には、昔ながらのカフェや、ラーメン屋、食事処など、学生にやさしい場所も多く存在する。

 魅力的な場所を探すのも、楽しみの一環だ。大学は、絶好の探検場所でもあるのだ。自分のお気に入りの場所を見つけて、ひとりでくつろぎ、楽しむ時間を過ごしてはいかがだろうか。

私のお勧めスポットは、レストラン『みつる』。
福大通用門から歩いてすぐ。
レトロな喫茶店のような雰囲気がたまらない。
軽食のほか、クリームソーダなどのドリンクメニュー
も豊富である。


2.自分の興味のある講義を見つける

 大学の講義はとにかく幅広い。各々の学科特有の専門知識を学ぶ講義や、英語をはじめとする語学の講義や、「生涯スポーツ論」―――福岡大学における体育の講義など、学びの範囲は高校生の時に比べてより広く、専門的になる。講義を選び、時間割を作るのは学生に委ねられているのだが、よくある履修登録の決め手として「単位のとりやすさ」や「友達も同じ講義を取っているか否か」が挙げられる。確かに、講義の難易度については、新入生には不安があるかもしれない。友達も一緒に受けることで、わからないところを教え合ったり、万が一自分が講義を欠席した時に、フォローしてもらうことができるかもしれない。しかし、それらの決め手よりも「自分が、その講義に興味・関心があるか」を優先することがベストである。自分が元々興味のある分野についてより深く学ぶも良し、将来の夢のために、たとえ難しそうでも必要な知識を身に付けるのも良し、新たに興味のある講義を見つけ、視野を広げるのも良しだ。しっかりと自ら学ぶ意欲を持った上で受けた講義は、やがて実になるだろう。自分の意思を優先して、あえてひとりで受講する環境は、自らを育てるかもしれない。

3.「学生割引」を活用する

 人生における最後の学生生活が、大学生になる人も少なくないだろう。悪い言い方ではあるが、「大学生活は人生の夏休み」と揶揄されるように、大学生は自由な時間が大いにある。その時間を充実させるのも、空虚なものにするのも、自分次第なのだ。大学生である特権をフル活用できるのが、「学生割引」である。

 よくある学生割引は、カラオケ、ボーリング、食事、映画などが対象として挙げられる。ソロ活という観点から見れば、自分の好きな曲だけを、人目を気にせず歌える一人カラオケは、需要が高まりつつある。現在では一人カラオケ専門のカラオケ店の存在も珍しくないほどだ。

 また、福岡大学の学生は、九州国立博物館の「キャンパス・メンバーズ」会員であり、様々な特典を受けることが出来る。例えば、学生証を提示することで、九州国立博物館の平常展を、何度も無料で観覧できるのだ。文化や歴史に興味がある学生はもちろん、新たな体験をしてみたい学生も、この特典は見逃せない。これまで挙げたことは、娯楽のうちに過ぎないかもしれない。しかし、学生のうちに様々な経験をすることは、自らの糧になり得るであろう。ひとりでも、自分が興味のある事をたくさん経験していくことが大事である。

 「ソロ活」を推奨した私だが、友人と楽しむ学生生活を否定したわけではない。信頼できる友人を作ることも、大学生活の醍醐味である。そんな中で、しっかりと自分の意思を持ってほしい。ひとりで選択し、行動することは、自立への第一歩となる。


2017年7月23日日曜日

LC哲学カフェ開催:ギリシア神話で哲学する


7月10日(月)の夕方、本年度第三回目のLC哲学カフェが開催されました。はじめての試みとして、今回の題材はギリシア神話。タイトルは「娘よ、ギリシアのためにおまえを生贄に?――ギリシア神話で哲学する」。

メイン・タイトルは、エウリーピデース(古代ギリシアの作家)作の悲劇『アウリスのイーピゲネイア』の、次のようなアガメムノーンのセリフを踏まえたもの。「望もうと望むまいとギリシアのためにおまえを犠牲にしなければならない。/これに逆らう力は無い。ギリシアは自由でなければならない。/そのために、娘よ、おまえと私は力を尽すのだ」(高橋通男訳)。

参加者は学生さんが7名と教員が2名。前半は、このエピソードの内容についての確認や、違和感を覚えるポイントなどの話が中心。アガメムノーンはギリシア軍の総大将。兵士たちは、娘を犠牲にするような人間についていきたいと思うのか。逆に、私情を捨てて全体を優先する姿が総大将にふさわしく、頼もしく見える……?

しかしそもそも、女神アルテミスが怒った原因は、アガメムノーンがアルテミスの鹿を殺したから。自分の罪の償いのために娘を犠牲にするのは許されるのか。いやその前に、戦争の原因は、パリスが人妻のヘレネーを誘拐したこと。結局、すべてパリスが悪い。しかし、パリスがヘレネーを手に入れたのは、女神アプロディーテーの助けによるもの。アプロディーテーがそんなことをしたのは、黄金のりんごを手に入れるため。そのりんごを持ってきたのは女神エリスで、そしてエリスがそんなことをしたのは、結婚の披露宴にエリスを招待しなかったから。結局、エリスを招待し忘れた人が悪い……?

カタカナの名前ばかりでわからない、という嘆きの声も聞かれる中、「つっこみどころ満載」、「むしろ、つっこみどころしかない」などの感想も。

後半は一挙に、話題が様々な方向に展開。娘を犠牲にしてより多くの人々の利益を優先する、という話から、トロッコ問題やサバイバル・ロッタリーの議論へ。その他、最近の人工知能をめぐる問題、歴史は繰り返すのか一回限りなのか、不老不死の是非、ヴァーチャル・リアリティ、ユーコン川をカヌーで下る話、等々。何ら話がまとまる気配のないまま、いつものように六時のチャイムと共に、強制的に終了となりました。

マンガを題材にするのと比べて、聞きなれないだろう名前も多く、ややハードルは高かったかもしれません。登場人物や物語についての説明など、もう少し工夫が必要だったかもしれない、と反省しつつ、いずれどこかのタイミングで、この手の題材もまた扱ってみよう、と企んでいます。

さて、いよいよ定期試験も間近。その後には夏休みが待っています。哲学カフェも一旦お休みして、また夏休み明け、9月末頃から再開の予定です。引き続き、このブログ上で告知しますので、乞うご期待。次回はあのマンガ作品を……?

なお今回、ギリシア神話のストーリーに関してはブルフィンチの本を参照しましたが、物語の細部について、また違ったヴァージョンもあります。興味のある人には、ホメロスの叙事詩(『イリアス』と『オデュッセイア』)やギリシア悲劇などがおすすめ。長い夏休み、ぜひ古典に挑戦を。

参考文献
 『ギリシア悲劇全集9』、岩波書店、1992年
 トマス・ブルフィンチ『ギリシア・ローマ神話(下)』、大久保博訳、角川文庫、2004年(増補改訂版)

2017年7月8日土曜日

伝統芸能 筑紫舞について(LC17台 亀井南央さん)

 今年度第3回目の学生記事をお届けします。文化学科1年生の亀井南央さんが九州の伝統芸能である筑紫舞について、自らが関わることになった経緯や活動内容について紹介してくれました。亀井さんは千葉県の出身ですが、筑紫舞を学ぶために福岡の高校に進学し、この4月に文化学科に入学されています。


伝統芸能 筑紫舞について
LC17台 亀井南央

 私は幼少の頃より、九州が発祥の日本の伝統芸能「筑紫舞」を習っており、将来は筑紫舞の伝承者になりたいと思っています。この舞は、平安時代の「続日本紀」にも書かれているほど歴史があり、歌舞伎や能、狂言などの元となったといわれる素晴らしい舞です。始めたきっかけは、祖母が習っており、物心を付いたときにはすでに習い始めていました。中学時代までは千葉県に住んでいて関東の教室で筑紫舞を習っていましたが、ご宗家の勧めもあり、本拠地で本格的に習得しようと決め、高校入学を機に家族と共に現在の本部である福岡市東区に移住しました。


 筑紫舞は、パリなどの海外公演でも成功を収めており、私もいつか海外公演を実現し、この貴重な日本の伝統芸能を世界に発信して参りたいと考えています。その時のために私は、日本の伝統や文化、宗教を深く学び、それを直接海外の方々に伝えられるようになりたいです。この目標を達成するためには、多角的な視点から日本の歴史や文化を学ぶことができ、留学の制度をたくさん設けてくださっている、福岡大学の人文学部文化学科で、夢を実現するために学習していこうと思います。

 現在私は、筑紫舞の門下の中でも師範という位におり、毎年近隣の香椎宮や紅葉八幡宮、住吉神社などを始め福岡の多くの神社で、舞を奉納させていただいております。

 また年に一度、大濠公園の能楽堂にて奉納ではなく舞台というかたちでお披露目していて、五年連続で出演させていただいております。昨年の舞台は、五百人以上の方々に見ていただくことができ、今までで一番幸せで、達成感のあるものとなりました。近年では、他の高校や大学に筑紫舞の講義をしに行くことも増え、名取りとして学生達に教えに行く立場にもあります。

 どの伝統的なものの分野にも共通して言える課題として、若年層があまり興味を示さないということが挙げられます。私と同年代の門下生を増やしたいという理由もあり、今まで培ってきた経験を十分に生かして、福岡大学でもより多くの学生にこの九州発祥の素晴らしい舞の存在を知って、興味を持ってもらいたいです。また、自分が師範という立場にあるので、教える側になり、ぜひみんなに触れてもらえたらと考えています。

 私はこの舞を、生涯かけて伝承していく所存です。先代の宗家、西山村光寿斉先生は、「筑紫舞を無形文化財にしたい」とおっしゃっておりました。私もそれを目標に、過去の経験を生かしながら、今できることを少しずつでもして、精進します。

 8月5日(土)12時30分から、大濠公園能楽堂にて公演致しますので、お時間がありましたらぜひ観にいらしてください。



2017年7月7日金曜日

卒業論文相談会開催のお知らせ

卒業論文相談会開催のお知らせ
(LC15台/3年生対象)

10月上旬の「卒業論文指導願」提出に向けて、夏休み明けの9月下旬、3年生を対象に卒業論文相談会を開催します。

会場には文化学科の全教員が集合。その場で個々の教員に、卒業論文について個別に相談することができます。卒業論文を書くかどうか迷っている人も、ぜひ参加してみて下さい。

 日時 2017年9月29日(金)16:30-18:00
 場所 文系センター棟15階 第5会議室

当初は9月27日(水)開催の予定でしたが、諸事情により開催日を変更しました。ご注意下さい。
※当日は『2017年度版 福岡大学人文学部文化学科 教員紹介』を持参して下さい。

なお、この相談会に参加しなくても、卒論の指導を受けることは可能です。

卒業論文を書こうと考えている人は、ぜひ夏休み前に一度、論文のテーマや参考文献などについて、身近な教員(所属ゼミの教員など)に相談してみて下さい。相談した教員が直ちに指導教員となるわけではありませんので、どの教員に相談しても構いません。その上で、夏休みの時間を利用し、本を読んだり資料を集めたり、少しずつ作業を進めておくのがおすすめです

卒業論文を書くために必要な手続きについては、『2017年度版 福岡大学人文学部文化学科 教員紹介』の25-31頁「卒業論文を書くために――卒業論文をめぐるQ&A」を参照して下さい。

卒業論文関連の最近のブログ記事は下記の通り。

平成28年度 卒業論文相談会が開催されました
平成28年度 卒業論文発表会が行われました
卒業論文発表会に参加して
卒業論文執筆を終えて(LC13台 植田舞香さん)
平成28年度提出の卒業論文題目一覧

何か不明な点があれば、教務連絡委員の小笠原か本多先生まで。

教務・入試連絡委員 小笠原史樹・本多康生

2017年6月30日金曜日

ゼミ研修旅行で熊本の市現代美術館と県立美術館を見学(植野健造先生)

 平成29年度第6回目の「教員記事」をお届けします。美術史の植野健造先生です。毎年ゼミ旅行のご紹介をいただいています。今年は、熊本市現代美術館と熊本県立美術館の見学記です。



ゼミ研修旅行で熊本の市現代美術館と県立美術館を見学

   
     植野健造(美術史

 日本美術史、博物館学担当教員の植野です。今年もゼミ旅行の報告をさせていただきます。

 私のゼミでは、浦上雅司先生(西洋美術史)のゼミと合同で前期と後期に1回ずつ日帰りで、美術館や寺院や文化財などを見学する貸し切りバス見学研修旅行を行っています。今年は、先日6月10日(土)、教員3名、学生21名の総勢24名で熊本市に行きました。今回は新任の落合桃子先生とそのゼミ生も参加しました。

 そもそも熊本市の2館への見学は昨年度当初に計画していたのですが、2016年4月14日、16日の地震発生で断念せざるをえなかったものです。朝9時に大学を出発し、午前中は熊本市現代美術館で、収蔵庫前室などのバックヤードツアーを行なった後、「高橋コレクションの宇宙」展 を学芸員さんによる説明を受けながら見学しました。

熊本市現代美術館、学芸員さんの説明を受ける

 精神科医・高橋龍太郎氏によって収集された高橋コレクションは、1990年代以降の日本の現代美術を主軸とした個人コレクションです。今回の展覧会は、2500点を超えるコレクションから、会田誠、小沢剛、草間彌生、束芋、チームラボ、奈良美智、名和晃平、蜷川実花、村上隆、森山大道、山口晃など36作家、約120点が展示された充実した内容でした。

熊本市現代美術館、奈良美智作品の部屋

 午後からは、熊本県立美術館で本館の「今西コレクションの名品」「コレクション」展、別棟で「細川コレクション 暮らしを彩る調度―うるしの美、蒔絵の輝き」展を見学しました。今西コレクションは、NHK熊本放送局の職員であった故・今西菊松氏が生涯をかけて収集した、肉筆浮世絵・版画・茶道具・工芸品などの優れたコレクションです。別棟の展示は、細川家伝来の美麗な大名調度を紹介するものでした。見学に先だち、やはり学芸員さんによる説明を受けましたが、昨年の地震時とそれ以後の復旧活動のお話しはたいへん興味深いものがありました。

熊本城 未申櫓(ひつじさるやぐら)
未申櫓は2003年8月復元、石垣は2016年4月の地震で一部崩落

 この日は曇りでした。県立美術館のある熊本城公園からは、熊本城の天守閣、宇土櫓などが望まれました。再建まであと何年かかるものでしょうか。

 記録として、2016年度後期の見学について書きとどめておきます。

2016年11月19日(土)
久留米市美術館「開館記念展 ふたたび久留米からはじまる。九州洋画」展、九州国立博物館「京都高山寺と明恵上人 鳥獣戯画」展、観世音寺(宝蔵、戒壇院)を見学。

*画像はすべて植野健造、2017年6月10日(土)撮影


**このゼミ旅行に参加した、LC15台の岡安麗奈さんから「ゼミ旅行記<熊本の美術館編>」という記事をご寄稿いただいています。そちらもぜひご覧下さい。


□植野先生のブログ記事
 ・ゼミ研修旅行で長崎・軍艦島に上陸見学
 ・ゼミ研修旅行でOPAM大分県立美術館を見学
 ・ゼミ研修旅行で長崎の博物館と美術館を見学

ゼミ旅行記<熊本の美術館編>(LC15台 岡安麗奈さん)

 今年度第2回目の学生記事をお届けします。文化学科3年生の岡安麗奈さんが熊本の美術館へと出掛けたゼミ旅行の模様を綴ってくれました。


ゼミ旅行記<熊本の美術館編>
     LC15台 岡安麗奈


 2017年6月13日㈯、人文学部文化学科の芸術系のゼミである植野ゼミ、浦上ゼミ、落合ゼミの3つのゼミが合同で熊本市現代美術館と熊本県立美術館に行って来ました。この記事では簡単にその時の模様をレポートします。

 ちなみに芸術系のゼミは毎年合同でどこかの美術館に日帰りで研修を行っているそうなので、 文化学科に入ろうかと考えている方で、芸術に興味のある方や文化学科の1年生の方は、これらの情報をゼミ選びの際には参考にしてもらえたらよいのではないかと思います。

 貸し切りバスに揺られておよそ2時間後に熊本県に到着しました。熊本市の中心地に入り、人通りの賑やかさに気を取られていると、 熊本市の中心街の商業ビルの3階に熊本市現代美術館はありました。

 

 最初に行った熊本市現代美術館では、現在行われている「高橋コレクションの宇宙」展という特別展を主に見ました。「高橋コレクションの宇宙」展というのは、精神科医・高橋龍太郎氏によって収集された1990年代以降の日本の現代美術を主軸に据えたプライベートコレクションである「高橋コレクション」の作品の展示会の一つです。2008年を皮切りに始まった「高橋コレクション」の展示会は、現在では日本各地の美術館で毎年のように開催される規模になっているそうです。

 「高橋コレクションの宇宙」展には、2500点を超えるコレクションの中から、36作家、約120点の作品が展示され、人物画から風景写真、椅子に置かれた人形、鹿の剥製からインスピレーションを受けたオブジェまで、あらゆる様式の作品が置いてありました。  何にも囚われていない現代芸術の奥行きや未知な部分に触れることができ、まさに展示会の名前にある現代芸術の「宇宙」を感じさせる展覧会であると感じました。

  私自身芸術に興味はあるものの、西洋の中世や近代の作品に強く関心があり、日本の美術また、現代美術はあまり関心も知識もないため正直「現代美術館」と名前が付くような場所に行ってもよいのだろうかと、少々戸惑いがありましたが実際に鑑賞してみると、知識がなくても楽しめて、非常に面白かったです。昔の作品にはない自由な発想や独創性、「こういうものもありなのか!」というようなびっくりさせられることの連続で非常にわくわくしました。機会があればまた行きたいと思います。また、ぜひこの記事をご覧になられている方にも一度足を運ばれることをお勧めします。

 「高橋コレクションの宇宙」展は特別展と上記しましたので、この記事を今ご覧になられている方は「もう見られないじゃないか」と思われた方もいるかもしれませんが、大丈夫です。

 実は常設展にも非常にユニークな作品が展示されています。例えば、「草間彌生の世界」という世界的アーティストである草間彌生氏が手掛けた不思議な世界が覗ける作品や「寝っ転がって本を読める」本棚など一筋縄ではいかないような作品が数多く展示してあります。ぜひ実際に見ていただきたいです。


 1時間半ほど鑑賞した後は、お昼休憩の時間です。熊本出身の浦上先生が、熊本市立現代美術館から10分くらいの場所にあるおいしい料理のお店に連れて行って下さりました。熊本ラーメンを食べた後、蓬楽饅頭で饅頭ではなく、ふわふわのかき氷までごちそうなりました。このかき氷はメニュー表に「コバルトアイス(ミルク味)」と表記されています。 ですので、私はてっきり白色ものが出てくるのだろうと思っていたら、予想に反して水色のかき氷が運ばれてきて驚きました。すると、生徒たちの驚いた反応を見ていた浦上先生が「コバルトブルー」から「コバルト」と名付けられているということを教えて下さり、学生一同は納得しました。ちなみに通はこれを頼むのだそうです。(笑)

 本日2つ目の美術館は熊本県立美術館ですが、熊本市現代美術館からバスでだいたい20分で着きました。 熊本県立美術館は、約1年前に熊本地震で倒壊してしまった熊本城のそばにあり、復興中の熊本城も遠くから見ることができました。熊本県立美術館自体は耐久性に富んだ建物構造をしているということで、損害は少なく済んだそうです。
 
 熊本県立美術館では、特別展の「今西コレクション」と常設展の「夜から朝へ:世紀末のロンドンとパリ」と別棟にある常設展の「細川コレクション」を見ました。 今西コレクションとは、元NHK熊本放送局の職員であった、故・今西菊松氏が収集した、肉筆浮世絵・版画・茶道具・工芸品などの大変優れたコレクションだそうで、中でも肉筆浮世絵は国内でも有数のコレクションとのことでした。確かに美人画では現代の感覚でも、おしゃれだなと思うような着物の柄が丁寧に描かれていたり、西洋の遠近法を用いて描かれた浮世絵が展示されていたりして楽しかったです。

 また「夜から朝へ:世紀末のロンドンとパリ」では、印象派のルノアールの作品があったり、現代美術のポップアートがあったりと時代をまたがった展示がなされていました。さらに「細川コレクション」では当時の貴重な甲冑や嫁入り道具などを見ることができて、非常に見どころ豊富な美術館だなと感じました。

 こちらの美術館も1時間半程見学した後、バスに揺られて無事に2時間かけて福岡大学に帰ってきました。
 
 後期の10月、11月あたりにもゼミ旅行があるそうなので楽しみです。

 それでは、これでゼミ旅行のレポートを終わります。 最後までご覧になってくださってありがとうございました。


*このゼミ旅行を引率された植野健造先生も「ゼミ研修旅行で熊本の市現代美術館と県立美術館を見学」という記事を書いておられます。そちらもぜひご覧下さい。


2017年6月26日月曜日

徒歩から見る通学路(LC16台 石丸堅一朗 さん)

 今年度第1回目の学生記事をお届けします。文化学科2年生の石丸堅一朗さんが日常のなかで新しいパースペクティブを獲得する面白さを描き出してくれています。



徒歩から見る通学路
LC16台 石丸堅一朗

 2016年3月、私は1台の自転車を買ったはずだった。アメリカの西海岸出身の彼は、整備などされていない浜辺を走るための丈夫で大きな車輪を抱え、それでいてどこか控えめな濃いグレーを身に纏っていた。彼は当然のような顔をして、今まで私がサドルを跨いで以来、幾度となく握り続けてきたその場所に、ブレーキを携えていなかった。どうやら、ペダルを後ろに漕ぐことでブレーキ機能が働く仕組みらしい。中高6年間、汚いママチャリを乗り回してきた私にとって、まさに運命の出会いであり、ひとめぼれだった。それからというもの、彼とはいろいろな場所に出かけた。毎日の通学はもちろん、少し遠いスーパーやコンビニまで買い物に行ったり、近くの神社を巡ったりした。しかし、いつからだろうか。大好きな浜辺の景色を見せてやれぬまま、彼の姿を見る機会は徐々に少なくなっていき、現在では、自分の名前が呼ばれるのを待ちながら、ひたすらベンチを温め続ける代打要員の如く、アパート裏の駐輪場に常に待機している状態である。梅雨の雨に嫌気がさしたからか、冬の寒さをしのぐためにポケットに手を入れておきたかったからか、はたまた眠い目をこすりながら整えた髪型が、向かい風で台無しになってしまったからか。乗らなくなった原因なんて、自分でもよく覚えていない。ただ一つ言えることは、歩きながら眺める通学路には、これまでとは違う景色が広がっていたということだ。

  毎朝家を出て、ほんの数十秒歩くと、「すき家」が見えてくる。さらにそこから進むと「マクドナルド」「ガスト」「城南消防署」「ローソン」「マックスバリュ」が建ち並んでいる。それぞれ形が違うものの、24時間体制であることに変わりはない。

 私が寝ている間にも、誰かがそこでは働いていて、誰かがそこを利用している。私が通学しているときにも、誰かがそこでレジを打っていて、誰かがそこでコーヒーを飲んでいる。自転車に乗って通学する私には、愚かなことにそれに気づく力が無かった。当然のように横を素通りし、気づくことや考えることを放棄していた。しかし徒歩という選択をした今、様々なものに注意が向くようになった。店のガラス越しに見えるおじいさんは、毎日同じ席に座って、何かを飲みながら新聞を読んでいる。老眼なのだろう、新聞を近づけたり離したり、今度は自分の顔を近づけたり離したり、忙しそうだ。たまにペンを握って何かを書き込んでいる。何を書いているんだろう。毎朝何時からそこに座っているのだろう。朝早くから消防車や救急車の車両整備をしている消防士の人たちは、昨夜はどこかに出動したのだろうか。ちゃんと眠れているのかな。自転車で通り過ぎていた場所を、歩いて通り過ぎる。2秒で通り過ぎていた場所を、10秒かけて通り過ぎる。僅かな時間の違いだけれど、この時間が新しい発見を生む。様々な人、しぐさ、表情に気づく。新たな疑問や感情が生まれる。これが、徒歩だから見ることのできた景色。

 次に注目してみるのは、「西の堤池公園」。片江方面から通学する学生なら、知っている人も多いのではないだろうか。この公園は真ん中に大きな池があって、それを囲むようにして遊歩道が敷かれている(正式名称は、〈健康さわやかロード〉らしい)。この遊歩道を半分くらい進めば、福岡大学のすぐ近くの市民センターや城南図書館へとつながるようになっていて、実際にはそこまで変わらないのだろうが、体感的には近道をしたような錯覚を味わうことができるうえに、健康さわやかになれるというまさに一石二鳥の魔法ルートである。

 とはいえ私も、この健康さわやかロードの虜となったのは徒歩通学を始めてからで、自転車で通学しているときは1度も通ったことは無かった。なぜならば、健康さわやかロードの入り口には「この健康さわやかロードには自転車では侵入してはならない」風の注意書きや看板が設置されていて、なぜか私はこの言葉に「この先、日本国憲法は通用せず」という文言に抱く恐怖に似たものを感じていたからである。しかし、そんな中でも勇者は結構存在しているもので、大学生に限らず、小学生、会社員、主婦、翁と幅広い層の勇者が自転車に跨って健康さわやかロードを疾走していることも事実である。また、健康さわやかロードは、ランニングやジョギングをしている人や保育園生が集団でお散歩をしていたりと1日中賑わっていることが多いので、その中を変化球ブレーキ持ちの彼と共に進んでいく勇気が無かったのも、事実である。

前置きが非常に長くなってしまったが、この健康さわやかロードを利用して通学したい場合に、健康さわやかロード初心者が陥りやすいミスを今回はここに記しておきたいと思う。問題となってくるのは「時間」だ。福大に通う学生の中でも、1限から授業が入っている学生は多いだろう。だがその寝ぼけたままの思考でこの健康さわやかロードに足を踏み入れることは許されない。それは何故か。健康さわやかロードの中腹に存在する、福大へと抜けるために通らなければならない関所が開くのは「午前9時」だ。何の因果であろうか。1限の始まる時刻も「午前9時」。つまり、1限へと向かうためにこの健康さわやかロードに足を踏み入れた場合、その先に待っているのはベルリンの壁の如く立ちはだかる、固く施錠された門だけだ。このベルリンの壁は、私の健康さわやかロードデビュー日にも無情にも立ちはだかった。そびえたつベルリンの壁を前に、私は茫然と立ち尽くしているだけだった。時計は8時40分。引き返すしか策は無い。引き返すだけならいい。1限には余裕で間に合うだろう。しかし引き返した先で私を待ち受けるのは、正規ルートで通学中の多くの学生であった。その学生たちが健康さわやかロード勢でなければ何も問題はないのだが、その学生らの中に生粋の健康さわやかロード勢がいたとしたら、私の愚行はすぐさま露呈し、心の中で嘲笑されていたに違いない。この事件はまさに、「健康さわやかロード」という無駄な共通点が生み出した負の遺産であろう。この事件以来、私は正規ルートと健康さわやかロードの2つを巧みに使い分けながら通学するようにまで成長している。

 つい先日、1限へと向かう私は、健康さわやかロードをこちら向きに歩いてくる何かが見えた気がした。私は気づかないフリをして、静かに正規ルートへと足を踏み出した。

 自転車に乗っているから見えるもの、バスに乗っていたから気づいたこと。人が何かを気づき、感じる瞬間は人それぞれだ。私の場合は、それが徒歩であった。様々なモノに気づき、感じ、新しい発見をした。次の発見は、意外にもあなたのすぐ足元に転がっているのかもしれない。