2017年8月11日金曜日

磯田ゼミ紹介(LC16台 笹本優太郎さん)


今年度6回目の学生記事をお届けします。文化学科2年生の笹本優太郎さんが、文化学演習Ⅰで所属している磯田則彦先生のゼミを紹介してくれています。磯田先生のお人柄とゼミの雰囲気が伝わってきます。


磯田ゼミ紹介
LC16台 笹本優太郎

 人文学部文化学科2年の笹本です。この記事では、私が所属する磯田ゼミについて紹介したいと思います。文化学科は歴史学科や英語学科のように特定の分野を専攻するのではなく、哲学・宗教学・芸術学・社会学・心理学・文化人類学・地理学など人間社会の文化に関する学問を、幅広く領域横断的に学んでいく学科です。自由で活気にあふれた文化学科の特徴がとりわけ磯田ゼミには色濃く出ています。

・磯田ゼミの流れ(前期)

  1. 自己紹介、レポートの発表の順番決め(第1回)
  2. レポート(ワードで作った紙のレジュメ)の発表、ディスカッション(第2回~14回)


・磯田ゼミの長所

 磯田ゼミは、ほぼ毎年、希望者で定員が埋まる人気ゼミの1つです。人気の理由は、おそらく自分の好きなテーマでレポートが書けるという点ではないでしょうか。磯田先生の専門分野は地理学・人口研究ですが、レポートで扱うテーマや学問分野は完全に自由で、それぞれのメンバーに任せられています。私たちの代の磯田ゼミのメンバーも、大体の人が選んだ理由にこの点を挙げていました。ゼミは自分の好きなことをより一層深く知る機会にもなれば、新たなことを調べる良い機会にもなります。そして様々なテーマのレポートを聞けるので、知識も広がりとても有意義な時間になります。今年度は「CDはなぜ売れなくなったのか」「死刑制度のこれからについて」「外国人から見た日本・日本人」など色々なテーマの発表がありました。私も「沖縄基地問題のこれから」というテーマでレポートを書き、沖縄における基地の現状や課題について理解を深めました。

 そして次の良い点は、自分でレポートのテーマや参考図書を選択して内容を決めることによって、レポートを書く力が身につきます。これは卒論を書くときなどに役に立ってくるのでとてもタメになります。そして磯田ゼミの基本は「仲良く、誰もが堂々と意見を言えるゼミ」なので、活発的なディスカッションも出来ます。

ゼミでのディスカッションの風景
あと、なんと言っても忘れてはならないのが磯田先生のお人柄です。磯田先生は学生に対しても上から目線ではなく対等に接してくださるので、ゼミはいつも和やかな雰囲気です。発表の後の質問タイムで磯田先生から色々な質問を受けますが、それもまた質問に答える技量が身につくのでとてもメリットになっています。
 
 磯田ゼミは自由度も高く学習しやすいゼミです。文化学科に入学して磯田ゼミで学ぶことで、私は様々なテーマに対して、しっかりと自分の意見を持って、積極的に発言できるようになり、自身の成長に繋がっているように思います。機会があればぜひ磯田ゼミを履修することをお勧めします。

2017年8月10日木曜日

木曜日のラグナロク(小笠原史樹先生)

平成29年度第7回目の「教員記事」をお届けします。今回の執筆者は、宗教哲学の小笠原史樹先生です。



木曜日のラグナロク

小笠原史樹(宗教学

ある日、映画館で「マイティ・ソー バトルロイヤル」というハリウッド映画のチラシを手に入れた。バトルロイヤル……? ネットで検索してみると、英語の原題は“Thor:Ragnarok”(ソー:ラグナロク)。元の「ラグナロク」を日本では「バトルロイヤル」に変えたらしい。

ソー(トール、ソール)は北欧神話に登場する神々の一人で、最高神であるオーディンの息子。ミョルニルというハンマーの使い手で雷を司り、最強の戦士として巨人や怪物たちと戦う。このソーを題材にした映画が「マイティ・ソー」で、「バトルロイヤル」はこのシリーズの第三作目にあたる。

ラグナロクも北欧神話の用語で、元々の意味は「神々の運命」。「黄昏」の意味を持つ言葉と混同されて、「神々の黄昏」と呼ばれることもある。神々を待つ運命とは、神々と巨人たちとの間で最後の戦いが行われる、ということ。つまりラグナロクとは、そのような最終戦争を指す言葉である。

夏が一度も来ないままに冬が三年間続くと、ラグナロクの兆しとされる。世界中で戦乱が起こり、狼たちが太陽を飲みこんで月を傷つける。大地が震えて山は崩れ、フェンリルという巨大な狼の鎖が解かれる。フェンリルは口を開けて突進するが、その上あごは天に届き、下あごは大地についている。ヨルムンガンドという巨大な蛇(ミッドガルド蛇)も海から這い上がり、フェンリルや巨人たちと共に、神々の住む世界へ殺到する。それに気づいた番人ヘイムダルが角笛を吹き鳴らし、オーディンは軍勢を招集して巨人たちに立ち向かう――。

ラグナロクでソーの戦う相手はヨルムンガンドと決まっており、すでにその勝敗も決まっている。オーディンはフェンリルと戦い、ヘイムダルはロキ(神々の一員にして巨人の子であり、フェンリルとヨルムンガンドの父親)と戦う。映画でこれらの戦いが描かれるとは限らないが、少なくとも「ラグナロク」というサブタイトルは、以上のような一連の物語を含意している。

ところで、今日はちょうど木曜日。木曜日を意味する英語の“Thursday”はソーに由来する、と言われる。つまり、木曜日は「ソーの日」。ちなみに、水曜日の“Wednesday”は「オーディンの日」。非日常的なハリウッド映画の中に留まらず、身の回りの一つ一つの言葉の背後にも、遠い異国の神話世界が広がっていたりする。神話の知識を少し手に入れるだけで、映画の楽しみ方も日常の見え方も変わる。

……と、いくら北欧に思いを馳せてみても一向に涼しさは感じられず、それもそのはず、ラグナロクには炎の巨人スルトも参戦しているのだった。

酷暑の日々、ラグナロクの到来はまだしばらく先のようである。


参考文献
 V・G・ネッケル・他編『エッダ――古代北欧歌謡集』、谷口幸男訳、新潮社、1973年
 R・I・ペイジ『北欧の神話』、井上健訳、丸善ブックス、1994年

小笠原先生のブログ記事
真昼の悪魔
スマホと空と攻殻機動隊
歌詞の中の神々

2017年8月9日水曜日

オープンキャンパス2017が開催されました

 福岡大学オープンキャンパス2017が、8月5日(土)に開催されました。

  文化学科関連では、鴨川武史先生の模擬講義「時間地理学で考える生活時間と生活空間」、 平井靖史先生の模擬講義「タイムトラベルを哲学する」に計400名近い多くの方々が聴講に来てくださいました。

 また、教員・在学生による個別相談も例年以上に盛況で、熱心なご相談、ご質問を数多くいただきました。

 模擬講義を担当してくださった先生方、教員スタッフ、学生スタッフの皆さん、そして何よりも文化学科を訪れてくださった高校生、保護者の皆さんに心よりお礼申し上げます。

 学生スタッフによる体験記も近日中にアップロードする予定です。お楽しみに。


2017年8月3日木曜日

心理学から見る福岡大学のマスコットキャラクターたち(LC16台 坂本景菜さん)

 今年度第5回目の学生記事をお届けします。LC16台の坂本景菜さんが、福岡大学のいくつかのマスコットキャラクターについて紹介し、心理学の講義で学んだ事を生かして分析してくれました。
 「うさぎのブンちゃん」という、文化学科のマスコットキャラクターも考案してくれています。



心理学から見る福岡大学のマスコットキャラクターたち

LC16台 坂本景菜

 皆さんは福岡大学のマスコットキャラクターをご存じだろうか。福大生の中にも「見たことはあるけど名前は知らない」「全く分からない」などという意見の人も多いと思う。かくいう私も1年生の間は全くといってもいいほどその存在を知らなかった。今回私は福岡大学のいくつかのマスコットキャラクターについて紹介するとともに、自分が1年生の時に受講した心理学の講義(2016年度末に定年退職された感情心理学がご専門の髙下保幸先生の講義)で学んだ事を生かして簡単に分析してみたいと思う。

福太郎先生
 まず最初に紹介するのは福岡大学図書館マスコットキャラクター「福太郎先生」。福太郎先生は福岡大学新中央図書館に住んでいるふくろうである。ホームページのキャラクター紹介では、チャームポイントはふくよかなお腹、つぶらな瞳、好物は辛子高菜のトッピングをしたバリ堅のとんこつラーメンで、替え玉は当たり前といういかにも福岡人らしい味覚をしている。趣味は閉館後の書架整理で、そのスピードは図書館スタッフ顔負けの手さばきらしい。そんな福太郎先生は、2015年に開催された「図書館総合展」で図書館キャラクターグランプリ「館の働き者部門」に入賞したという経歴もある。ちなみに、絵本や漫画など物語の中でふくろうが他の動物たちに比べ「知識人」として描かれがちなのは、一説によるとギリシャ神話の知恵の女神アテナ(ミネルヴァ)の使いがふくろうであったことから、いつしかふくろう自体が知恵の象徴になったのが始まりだという。福太郎先生も例にもれず博識なふくろうであり、「先生」と呼ばれているからには教えている生徒が存在する。その名も「ペンギンズ」。

ペンギンズ

 ペンギンズはカラフルなペンギンたちで、れっきとした福大生である。総員9羽で、それぞれが福岡大学の学部に所属しており、1学部に1羽いる。人文学部はペン、法学部は天秤、商学部は電卓…といったようにそれぞれの学部に関係したアイテムを持っており、福太郎先生に図書館の活用方法を習って、卒論やレポートを仕上げようと思っているらしい。「いつかは福太郎先生と一緒に空を飛ぶのが夢」ということだが、福太郎先生はふくろう、彼らはペンギンである…という事についてはあまり触れないほうがいいのかもしれない。(福岡大学図書館 キャラクター紹介[http://www.lib.fukuoka-u.ac.jp/character/])

ステッピイ
  また、福大生ステップアッププログラム(FSP)マスコットキャラクターは階段「step」と勉強「stady」をかけたニックネームの「ステッピィ」。黄色いカラーリングと階段を模したシンプルなシルエットが特徴である。詳しい設定などの公開はされていないが、ホームページのイラストを見るに、植物を育てたり、様々な分野に興味を持っていたり、飛び跳ねたりとアグレッシブな様子が見られる。ちなみに福大生ステップアッププログラムとは、「学び」「豊かな人間性」「「社会」の3つのステップから本学生の人間的成長をサポートするプログラムで、学生同士のコミュニケーションをベースにした学生参加型の授業や、アジア圏の協定校との国際交流セミナーを開講したり、本学の学生が自主的に企画した独自のプロジェクトを支援したり、卒業生の方から大学生活で学んだどのような事がいかに人生で大切なものであるかを教えて頂く講演を開催したりなど盛りだくさんの内容になっているので、気になる方は受講してみる事をお勧めする。(福大生ステップアッププログラム2017 ステッピィのプロフィール[http://www.fukuoka-u.ac.jp/fsp/fu/profile/])

 さて、ここまでにあげた3つのキャラクターの中で、一番心理学の観点から「一般的にかわいい」とされるキャラクターはどれだろうか。

 心理学的に「かわいい顔」とされるのは「幼児図式」、つまり赤ちゃんのような顔である。細かく挙げると、高く張り出した額、顔に相対して大きな目、適度な目の光、丸く膨らんだ頬、小さな口、体に比べて大きな頭、丸い感じの体つき、ぎこちない動き、などがある。中でも中核的な部分は「上顔に比べて短い下顔」である。人間に限らず、他の動物やぬいぐるみや人形、アニメのキャラクターでこのような要素があれば「かわいい」と思わせることが出来るという。そしてこの「幼児図式」を参考に考えると、目の大きさ、目の光、小さな口、全体的な丸みなど当てはまる部分が一番多いのは福太郎先生であると言える。特に前述した福太郎先生のチャームポイント「つぶらな瞳、ふくよかなお腹」が決め手になった。

 せっかくなので私も幼児図式になるべく沿った、文化学科のマスコットキャラクターを考えてみた。名づけて「うさぎのブンちゃん」である。耳は福岡大学の「F」をデザインに、文化学科の幅広く学べる特性からいろいろな物を詰め込めるように大きなリュックを背負わせた。手に持っているのはにんじん型のメモ帳、首元には文化学科の頭文字でもあり、自分の名前の頭文字でもある「B」が入ったバンダナをしている。体に対して大きな頭、小さい口、全体的に丸いフォルム、丸い頬、下部に寄った大きくつぶらな目、ありきたりなキャラクターデザインのような気もするが、それだけ幼児図式が様々な「かわいい」キャラクターの基礎として使われていると言えるだろう。

うさぎのブンちゃん

 今回は一部のキャラクターの紹介と、髙下先生の心理学の講義で学んだ内容を踏まえて「幼児図式」から見る「かわいさ」について分析したが、これを機に福岡大学のマスコットキャラクターを身近に感じてくれる人が増え、さらには図書館や福大生ステップアッププログラムなどに興味を持つ人も増えてくれれば、マスコットキャラクターたち(関係者の方々)にとっても喜ばしいことだと思う。

2017年7月31日月曜日

生死を分かつ瞬間の認知情報処理(大上 渉 先生)

 平成29年度第6回目の「教員記事」をお届けします。心理学の大上 渉先生です。人間が生と死の瀬戸際で発揮する認知能力について、その内容と理由をわかりやすく解説していただきました。



生死を分かつ瞬間の認知情報処理

   
     大上 渉(心理学

 19歳だったか20歳だったか、一度死にかけたことがある。クリスマスの夜遅く、小倉の魚町にあるバイト先から八幡にある自宅までバイク(ヤマハTZR)で帰宅していた時だった。自宅近くの「岸の浦」の下り坂を走行中、脇道から飛び出してきたタクシーの横っ腹に衝突した。それと同時にバイクから放り出され、空中を数回転して地面に叩き付けられた。身体は一部強打したものの、運よく受け身の姿勢がとれ、骨折など大きなけがはせずに済んだ。

 この時、不思議な経験をした。空中に放り出されたのはほんの一瞬だったが、時間がとてもゆっくりと進んでいるように感じた。時間の感覚だけでなく、周りの世界もスローモーションで動いているように見えた。空中に放り出されながら見た夜空のことは、今でも覚えている。星の瞬きまでしっかりと見えた。

 このエピソードは私自身の体験であるが、心理学における事例研究からも、生死を分かつ瞬間にスローモーション的知覚がなされることが報告されている。どうも緊急時に起動する認知情報処理システムのようだ。

 生と死の瀬戸際に起動する認知情報処理システムについて詳しく調べるには、個人が見舞われた危機的状況時に、知覚や認知にどのような変化が生じたのか、多くのエピソードを収集し、それぞれの共通点や相違点などを整理することにより、仮説を導き検証することができるかもしれない。

 しかしながら、それは簡単なことではない。なぜならば、体験者の性別や年齢、職業、また危機的出来事の詳細(例えば、同じ絶体絶命の状況であっても、交通事故と自宅の火災では質的に著しく相違する)には多くの相違点がみられることが予測され、さまざまな条件がそろったデータを得ることは難しいからだ。

 また、実験室において危機的状況を設定し、知覚・認知にどのような変化が生じるのか、測定することも方法論的には可能ではあるものの、実験参加者に死を予感させるまでの状況を再現することは、技術的にも倫理的にもほぼ不可能という大きな問題が残されている。

 そこで、参考になるのは米国の警察官に対して行われた調査である。日本とは異なり、米国では、武装した麻薬密売組織や銃乱射犯を制圧する際に銃撃戦となることも多い。その際、警察官は死をも覚悟する強烈な情動的ストレスに曝される。そこで、銃撃戦を経験した警察官を調査対象とすることで、個人属性や危機的状況がある程度統制された、比較対照しやすいデータが得られることになる。

 米国の警察心理学者であるアートウォール(Artwohl)は、1994年から1999年にかけて、米国の法執行機関に所属し、銃撃戦を経験した警察官に対する質問紙調査を行った。総勢157人のデータを分析したところ、次のような結果となった(表1参照)。
 157人のうち、筆者がかつて経験したようにスローモーション体験をした者が62%、またそれ以外にも、著しい視野狭窄(トンネル視)の経験をした者が79%、遠方の細部まではっきり見える鮮明な視覚経験を報告した者が71%、聴覚抑制を経験した者が84%おり、出来事の記憶が一部欠落した者が52%いた。

 アートウォールの調査で報告された心理現象について、もう少し補足する(スローモーションについてはすでに述べたので割愛)。まず、視野狭窄とは、視界が著しく狭くなり、周辺にある事物の知覚が難しくなる現象をいう。あたかもトイレットペーパーの芯からのぞいているように見えたとの報告もある。鮮明な視覚経験とは、あまりに細かすぎて普段では決して見えない細部が鮮明に知覚される現象である。例えば、拳銃の引き金に掛かった犯人の指や、拳銃の弾倉に格納された弾丸(リボルバー式であれば)まではっきりと見えたという。また聴覚抑制とは、銃撃戦であれば発砲音が鳴り響いているにもかかわらず、何も聞こえない現象をいう。最後の出来事の記憶の欠落とは、出来事の記憶のうち、どうしても思い出せない空白部分が生じることであり、自分が行った行動や言動について他人から指摘されても覚えていないし、なぜそのようなことを行ったのか説明できないという。

 このような警察官に生じる心理現象は、アートウォール以外の研究においても繰り返し報告されており、米国の法執行機関の第一線で活躍する警察官にはよく知られた現象のようである。

 緊急事態時に生じる視野の狭窄については、警察官ばかりでなく、事件・事故の目撃者にも生じることが知られている。かつて筆者も実験的方法によりこの現象を検証したことがある(大上ら,2001)。1970年代ころより、心理学者は諸条件を厳密に統制した実験的手法を用いて目撃証言の信頼性を吟味する研究に取り組んでいる。筆者が行った実験の目的は、恐怖や驚きなどの情動が喚起されると目撃者に視野狭窄が生じるか否かを明らかにすることであった。

 実験手続きとしては、まずディスプレイ前に実験参加者を着座させ、ビデオを提示する。このビデオは、実験参加者の情動を操作するための刺激であり、恐怖・驚きの情動に誘導する情動ビデオと、情動には影響を及ぼさない中性ビデオの2種類があった。実験参加者はこのビデオを観察するのだが、恐怖や驚きの情動が喚起される場面において、ディスプレイ画面の4隅のうちいずれかに数字が一瞬(0.5秒)出現する(図1参照)。
 ビデオ観察直後に、実験参加者に数字の出現に気付いたか尋ね、その数字の検出成績について、情動ビデオ観察群と中性ビデオ観察群とで比較した。もし、恐怖や驚きにより、視野狭窄が生じるのであれば、情動ビデオ群の方が、中性ビデオ群よりも、画面隅に出現する数字に気付かず、見逃してしまうことが予測される。実験結果は、予測したとおり、中性ビデオ観察群よりも、情動ビデオ観察群の数字検出成績の方が低く(図2参照)、ネガティブな情動により視野が縮小したものと考えられた。
 では、生と死が紙一重となる極限状態では、なぜわれわれの知覚・認知機能に抑制、ないしはある指向性を持った鋭敏化が生じるのであろうか。

 認知心理学的なレベルでは、処理資源モデルによる説明が行われている。自動車のエンジンを動かすにはガソリンが必要なように、われわれの認知情報処理システムを稼働させるには処理資源と呼ばれる精神的エネルギーのようなものが必要となる(芳賀,2000)。個人が利用できる処理資源量は一定で、限りがある。

 従って、幾つもの課題を同時に行うと、それぞれへの処理資源の割り当てが少なくなり、精緻な課題処理が行えず、誤りも多くなってしまう。ゲームのプレイやスマホの操作に夢中になると、話し掛けられても返事が上の空になってしまうのはそのためだ。

 生死を分かつような緊急事態に際しては、生存に必要な情報の「選択と集中」が行われているものと考えられる。有用な情報が多く含まれる視覚情報に少しでも多くの処理資源を振り向けるために聴覚は抑制・遮断される。また、できる限り視野を狭くすることにより、クリティカルな一点の情報処理に集中させる。そのような情報処理の集中化に伴い、膨大な視覚情報が精緻に深く処理されることから、日常では経験できない鮮明な知覚経験をし、同時に時間知覚にも変化が生じるものと考えられる。

 このように、われわれは、生と死の瀬戸際で驚くべき認知能力を発揮する。これらは人間の生に対する執着と、これまでの適応の歴史を反映した機能なのかもしれない。

参考文献
  • Artwohl, A (2002). Perceptual and memory distortion during officer-involved shootings. FBI Law Enforcement Bulletin, 71, 18-24.
  • Grossman,D. & Christensen, L.W  (2004). On Combat. The Psychology and Physiology of Deadly Conflict in War and in Peace. International, Armonk, NewYork, 安原和見(訳),2008 「戦争」の心理学 二見書房
  • 芳賀繁(2000). 失敗のメカニズム―忘れ物から巨大事故まで―日本出版サービス
  • 大上渉・箱田裕司・大沼夏子・守川伸一(2001). 不快な情動が目撃者の有効視野に及ぼす影響 心理学研究, 72, 361-36.


*なお,この記事は,福岡大学の総合学術機関誌『七隈の杜』第12号(2016年1月19日発行)に掲載された随筆を,本学広報課の許可を得て転載したものです。

 

2017年7月28日金曜日

平成29年度 オープンキャンパスのご案内

 今年度オープン・キャンパスの文化学科関係のお知らせです。
 文化学科の模擬講義、個別相談には右のポスターを目印にどうぞ。たくさんのご来場をお待ちしています。


◆模擬講義「文化学科で考える<時間>」

 会場  8号館2階 826教室

1)「時間地理学で考える生活時間と生活空間」
  講師  鴨川武史 先生
  時間  11:30 ~ 12:10

2)「タイムトラベルを哲学する」
  講師  平井靖史 先生
  時間  14:00 ~ 14:40


◆教員・在学生による個別相談
  会場  A棟6階 A615 教室
  時間  10:00 ~ 16:00


 また、ご来場頂いた方には、各界で活躍する文化学科の卒業生や在学生を紹介した『文化学科卒業生・在学生名鑑』(2017年版)をプレゼントします。卒業生24名、在学生10名の記事に加えて、文化学科の行事や就職先の情報も載っています。文化学科の学生が手作りで製本しました。

 250部限定です。品切れの際はご容赦下さい。





昨年のオープン・キャンパスの様子はこちらをご覧下さい。
オープン・キャンパスが開催されました








一昨年の文化学科のオープン・キャンパスの様子を学生が記事にしてくれました。


大学全体オープンキャンパスの案内はこちらをどうぞ。
 http://nyushi.fukuoka-u.ac.jp/event/oc/

2017年7月24日月曜日

学生生活~ひとりでも楽しむには~(LC11台 北原楓さん)

 今年度第4回目の学生記事をお届けします。LC11台の北原楓さんが「大学生といえば、友達がいないと楽しめない」という考えに一石を投じたい、とひとりでも大学生活を楽しむための3つの方法を紹介してくれました。



学生生活~ひとりでも楽しむには~
LC11台 北原 楓

 皆さんは、「ソロ活」という言葉をご存じだろうか。ソロ活とは、ひとりご飯、ひとり映画、ひとりカラオケ―――などといったような、ひとりで物事を楽しむ事である。自分のペースで、自分の好きなことを、自分で選んで出来ることが、ソロ活の魅力だ。

 大学生といえば、サークルに所属したり、アルバイトに勤しんだり、大学で出来た仲間たちと、楽しい青春を過ごすというイメージを持つ人も多いと思う。確かに、大学校内やその周辺地域では複数人で過ごすことを前提とした施設やサービスが充実している。それも大学生の生活の一面ではあるが、しかしながら、ひとたび別の視点を持ってみると、ひとりでも楽しめるような要素が、意外と多いことにも気づく。今回は、「大学生といえば、友達がいないと楽しめない」という考えに偏重しがちな昨今の状況に、一石を投じたい。私の考える、ひとりでも大学生活を楽しむ3つの方法を、この記事で紹介しようと思う。

1. お気に入りの場所を見つける

 誰しも、自分が落ち着く場所を持っているのではないだろうか。大学の中でも、自分のお気に入りの、リラックスできる場所を見つけられたのなら、より活き活きとした大学生活を送ることが出来るであろう。そんな場所を見つけるには、福岡大学はたいへん恵まれていると言っても過言ではない。福岡ヤフオク!ドームの、フィールド面積約45個分の敷地を有する福岡大学の中には、講義が行われる校舎をはじめ、図書館、食堂、売店など、様々な施設が設けられている。また、大学周辺には、昔ながらのカフェや、ラーメン屋、食事処など、学生にやさしい場所も多く存在する。

 魅力的な場所を探すのも、楽しみの一環だ。大学は、絶好の探検場所でもあるのだ。自分のお気に入りの場所を見つけて、ひとりでくつろぎ、楽しむ時間を過ごしてはいかがだろうか。

私のお勧めスポットは、レストラン『みつる』。
福大通用門から歩いてすぐ。
レトロな喫茶店のような雰囲気がたまらない。
軽食のほか、クリームソーダなどのドリンクメニュー
も豊富である。


2. 自分の興味のある講義を見つける

 大学の講義はとにかく幅広い。各々の学科特有の専門知識を学ぶ講義や、英語をはじめとする語学の講義や、「生涯スポーツ論」―――福岡大学における体育の講義など、学びの範囲は高校生の時に比べてより広く、専門的になる。講義を選び、時間割を作るのは学生に委ねられているのだが、よくある履修登録の決め手として「単位のとりやすさ」や「友達も同じ講義を取っているか否か」が挙げられる。確かに、講義の難易度については、新入生には不安があるかもしれない。友達も一緒に受けることで、わからないところを教え合ったり、万が一自分が講義を欠席した時に、フォローしてもらうことができるかもしれない。しかし、それらの決め手よりも「自分が、その講義に興味・関心があるか」を優先することがベストである。自分が元々興味のある分野についてより深く学ぶも良し、将来の夢のために、たとえ難しそうでも必要な知識を身に付けるのも良し、新たに興味のある講義を見つけ、視野を広げるのも良しだ。しっかりと自ら学ぶ意欲を持った上で受けた講義は、やがて実になるだろう。自分の意思を優先して、あえてひとりで受講する環境は、自らを育てるかもしれない。

3.「学生割引」を活用する

 人生における最後の学生生活が、大学生になる人も少なくないだろう。悪い言い方ではあるが、「大学生活は人生の夏休み」と揶揄されるように、大学生は自由な時間が大いにある。その時間を充実させるのも、空虚なものにするのも、自分次第なのだ。大学生である特権をフル活用できるのが、「学生割引」である。

 よくある学生割引は、カラオケ、ボーリング、食事、映画などが対象として挙げられる。ソロ活という観点から見れば、自分の好きな曲だけを、人目を気にせず歌える一人カラオケは、需要が高まりつつある。現在では一人カラオケ専門のカラオケ店の存在も珍しくないほどだ。

 また、福岡大学の学生は、九州国立博物館の「キャンパス・メンバーズ」会員であり、様々な特典を受けることが出来る。例えば、学生証を提示することで、九州国立博物館の平常展を、何度も無料で観覧できるのだ。文化や歴史に興味がある学生はもちろん、新たな体験をしてみたい学生も、この特典は見逃せない。これまで挙げたことは、娯楽のうちに過ぎないかもしれない。しかし、学生のうちに様々な経験をすることは、自らの糧になり得るであろう。ひとりでも、自分が興味のある事をたくさん経験していくことが大事である。

 「ソロ活」を推奨した私だが、友人と楽しむ学生生活を否定したわけではない。信頼できる友人を作ることも、大学生活の醍醐味である。そんな中で、しっかりと自分の意思を持ってほしい。ひとりで選択し、行動することは、自立への第一歩となる。