2015年5月31日日曜日

一人暮らしと実家暮らし(LC13 井狩大輔くん、濱口拓也くん)

 今年度最初の学生記事をお届けします。執筆者は、井狩大輔くんと濱口拓也くん(2013年度入学)です。

 
 この記事では、人文学部文化学科に所属する井狩大輔と濱口拓也が、一人暮らしと実家暮らしについてお話ししたいと思います。

 ご存じの通り、一人暮らしと実家暮らしにはそれぞれに一長一短があります。この記事はあくまで主観的なものですが、その大まかなメリットとデメリットを知ることで、皆さんが将来の学生生活について考えるための参考になればと思います。 

井狩大輔の「一人暮らし」
 一人暮らしをするにあたっては、当然ですがすべてのことを一人でしなければなりません。食事、洗濯、掃除、あらゆる面において自分しかする人間がいない生活を強いられます。

 中でも特に苦しむことといえば、予期せぬトラブルです。私自身も先日、PCとTVがほぼ同時に壊れてしまい非常に焦りました。金銭的に余裕がない状況で知識もないだけに、独断では危険だと思い、両親と連絡を取りながら何とか無事に買い替えることができました。私が古い家電を引越しの際に持ってきたことも原因ではありますが、このような不測の事態にはやはり人は焦るものです。 

 ただし、こうした事態をメリットと考えることもできるでしょう。どのような人生を送るにしても最終的には一人暮らしはほぼ避けられないので、思いがけない状況に上手く対処することは生きていく上でも大変重要です。大学生活は、子どもから社会人になるための転換期と捉えることもできます。さまざまな事態に慣れておくという意味で一人暮らしをするのも決して悪くないでしょう。 

濱口拓也の「実家暮らし」
 私は大学入学前から留学したいと思っていましたので、大学1年目にはTOEICをずっと勉強していました。2年目には実際に短期ですが海外留学をし、同年に文芸部にも入り、今年からは就活準備、ということで多忙な3年間を過ごしています。
留学先のオックスフォード大学クライストチャーチ・カレッジにて
(2014年8月)

 これまでいろいろと目標を立てて頑張って来ましたが、その経験から実家暮らしの人には以下のようなメリット・デメリットがあります。

 まずメリットからですが、実家暮らしの人は大抵食費を気にしなくていい(せいぜい昼ごはんくらい)ので、バイトをすればするほどお金が貯まります。お金が貯まることで、その分を旅行や留学資金、趣味に費やすことができます。

 デメリットに関しては、まず実家暮らしなので通学に時間がかかります。そして家での生活が家族と共有なので、自分だけの時間がなかなか取れません。また生活リズムも固定化してしまいます。

 一番のデメリットは七隈周辺にいる一人暮らしの友達となかなかコミュニケーションが取れないことでしょうか。というのも、七隈周辺にいる福大生達は自由なので、近くに住む友達や先輩の家での飲みニケーションはしょっちゅうです。それによりコミュニティが知らず知らずのうちに出来ていたりして、なんだか実家暮らしは損をしているかのように感じられます。

 これまでの経験から、実家暮らしの人に気をつけて欲しいのは、すきまの時間を上手く使うこと、バイトをしすぎて時間を無駄にしないこと、です。

 生活が固定されているのを逆手にとり、コツコツ頑張っていくと良いです。バイトでお金を貯めるのも良いですが、時間を上手く使うことができればきっと目標を達成できますよ。


LC13台 井狩大輔、濱口拓也

2015年5月26日火曜日

第七回「マンガde哲学」開催

今月もLC哲学カフェが開催されました。5月23日土曜日の夕方、場所はA811教室。タイトルは「私はあの時どんな顔をすればよかったのだろう――『空が灰色だから』で哲学する」。初めての土曜日開催だったものの、参加者は前回より増えて学生諸氏が7名、教員2名。A棟8階からキャンパスを見下ろしつつ、約10名で議論を。

今回の素材は阿部共実の短編集『空が灰色だから』。取り上げたのは、知る人ぞ知る名作、第16話の「金魚」。無表情な主人公によって繰り返される問い。「なんでみんなあんなにすぐ顔を変えることができるのだろう」「みんなはどんな顔をしていたのだろう」「私はあの時どんな顔をすればよかったのだろう」――。

なぜ顔を変えられるのか、なぜ顔を変えるのか。周囲とうまくやっていくため? 周囲に合わせて表情を作る。或いは、話しかけるな、というメッセージとしてあえて無表情を保つ。実際、無表情な人は何を考えているのかわからないので、話しかけづらい。しかし、仲良くならないと表情が出せない? 逆に仲良くなると、無表情でいても平気になる?

そもそも「顔」と「表情」の違いは何か。顔は自分のモードやキャラを示すもので、表情は自分の感情を表現するためのもの? もし顔や表情が他者の視線を意識して作られるものならば、誰もいないところでの顔や表情は? 人がいないからこそ泣けたり、笑えたりすることもあるはず……。

顔や表情が本当の感情を伝えているとも限らない。作っている顔と作っていない顔――。某教員が「自分の幼い頃の写真を見ると、作り笑顔ばかり」と言えば、もう一人の教員が「私の幼い頃の写真は、カメラの方をにらんでばかり」と応答。

作品それ自体に関しては、最後の一コマでの主人公の表情に関する議論が。主人公は笑っている? それとも、やはり無表情のまま? その他、この作品には感情を直接する表現する言葉がない、主人公は周囲の人々を別の生き物のように観察している、という指摘も。

それ以外にも話題は多岐にわたり、怒り方の作法、女性のナチュラル・メイクや男性の無造作ヘア、電話で話す場合と対面して話す場合との違い、等々。文化学科内部の男女関係にまで話が及んだ辺りで、チャイムが鳴って終了となりました。

未だ参加者は少ないものの、前回よりは回復。来月もまた、土曜日の夕方に開催される予定です。そして、次回は学生さんが進行役を。お誘い合わせの上、ぜひ気軽に御参加下さい。

2015年5月22日金曜日

国境を渡る風・満洲里(磯田則彦先生)

「教員記事」をお届けします。本年度第三回は地理学の磯田則彦先生です。



国境を渡る風・満洲里
―異文化の接触地帯インナーモンゴリア2―

 こんにちは。文化学科教授の磯田則彦です。私の専門は、人口研究と異文化の接触地帯の研究です。両者ともに複合領域的な研究になりますが、それぞれに非常に魅力的な分野です。

 まず、人口研究についてですが、具体的には人口移動研究と人口問題研究が中心になります。前者については、日本・北アメリカ・北・西ヨーロッパを中心に研究してきました。人は生まれてから死ぬまである場所に定住し、一切別の場所に移ることがなくてもよいのでしょうが、実際にはライフステージの要所要所で移動を行う人が大勢います。果たして、「その人たちは、どのような属性で、どういった理由で移動を行うのでしょうか?」。以前から、そんなことが気になってしまいます。
 また、後者については、非常に大まかな表現を許していただければ、「人口が停滞から減少へ向かいつつある社会」(現時点では、概して先進諸国の一部や東欧諸国に多く見られます)や、「短期間に人口が急増している社会」(概して、後発開発途上国とイスラーム諸国に多く見られます)を対象として研究を行っています。出生と死亡に影響を与える社会経済的要因や政策などが中心的なテーマです。

 次に、異文化の接触地帯の研究ですが、このトピックスについては、文化学科で専門のゼミや講義を担当し、学生諸君の卒業論文の指導を行う中で身近になってきた分野と言えるかもしれません。前回に続き、今回も私のフィールドの中から「インナーモンゴリア」(前回のアーティクルをご参照ください)についてご紹介いたします。





 ダーシンアンリンを抜けると、やがて目の前には草原が広がってきます。長い長い列車の旅です。目的地の満洲里は、ヘイロンジャンの省都ハールビンから西北西に1,000km近く、最寄りの海岸線から直線距離にして千数百キロメートルも内陸に入り込んだところにあります。乾いた空気と藍い空がとても印象的です。島国の日本にこのような場所はありません。広い広いインナーモンゴリアの北東端にあるこの街は、中国・ロシア・モンゴル3か国の国境地帯に位置しています。ダーシンアンリンを抜けてから数時間、車窓には延々と大草原が続きます。日本ではとかく動物園で見る機会が多い馬・牛・羊、何とラクダ(このあたりは「フタコブラクダ」が多い)の群れを随所に確認できます。沿線は世界有数の放牧地帯になっています。ハールビンを出発して十数時間、大草原の中に美しい街並みが見えてきました。満洲里です。この典型的な異文化の接触地帯についてご紹介しましょう。


 満洲里は人口およそ20万人、漢族・モンゴル族・ロシア人をはじめとして、多くの民族が暮らす街です。古くは「ルービン」(ロシア風の都市名)と呼ばれ、「マンジョウリー」はロシア語で「マンチューリア」を意味します。中国最大の陸運の貿易都市であり、ここを拠点にロシア・東欧諸国との貿易が行われています。中国とロシアを結ぶ国際列車は、ここを通ってバイカリア方面に向かいます。ロシア側の隣街・ザバイカリスクとはこの鉄路や道路で結ばれており、人々の往来も盛んです。一方で、モンゴルとの国境地帯は草原や湿地になっており、人の往来もかなり少なくなります。街中ではロシア人を多く見かけ、店の看板には、漢字・モンゴル文字と並んでキリル文字を至るところで見かけます。店頭のスピーカーからは、中国語とともにロシア語が響きます。買い物にもルーブルが使える店が多く、中国の土産物をはじめとして、ロシアのマトリョーシカ・チョコレート・装飾品やモンゴルの干し肉・チャイ(ツァイ)などが所狭しと並べられています。ここの食文化の特徴は、3か国の食材と調理法が並存しているところにあり、一般的な中国料理に加えて、羊肉料理やロシア料理を楽しむことができます。








 


 ところで、皆さんは国境線を見たことがありますか?前述のとおり、満洲里は国境地帯にある街です。街外れには「グォメン」のように観光資源化された国境もありますが、一般的には、草原の中にフェンスや有刺鉄線が張られたものとなります。国境警備に当たる兵士が立ち、厳重な警戒態勢が敷かれているところもあれば、ただ「仕切り」だけが延々と続くところもあります。私たち島国に生まれ育った人間には、普段国境線はあまり意識されず、また目にする機会もありません。ただ、これは山々や大草原のように自然に存在するものではありません。あくまで、人工的なものです。昔から中国とロシアの間では、互いの領土を巡って争いがしばしば発生してきたと聞いています。しかし、もともとはこの地帯に国境の概念はなく、丘陵性の山々が並び、草原が広がり、その中をゆっくりと河が流れていただけです。いつから、バイカリア・モンゴリア・マンチューリア間の人間の移動に制限が加わったのでしょうか?今回、私が見た大草原の中の国境線では、その上をさわやかな風が吹き抜け、鳥たちが自由に行き来していました。(終)


2015年5月7日木曜日

LC哲学カフェ開催のお知らせ

 今月も哲学カフェが開催されます。前回の反省から、今回は試しに土曜日。
 時間や場所は下記の通りです。

  【マンガde哲学】
  私はあの時どんな顔をすればよかったのだろう――『空が灰色だから』で哲学する

  日時 5月23日(土) 16:30-18:00
  場所 A811教室

  参考文献 阿部共実『空が灰色だから(2)』、秋田書店、2012年、pp.41-52


 飲み物は各自で用意して下さい。
 参加者の自己紹介は行いません。また、無理に発言しなくても構いません。
 途中入室、途中退室も自由です。
 なお、終了後の懇親会等は予定していません。悪しからず。

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