ユ-モア・ウォッチング in フクダイ
髙下保幸(心理学)
ということで、8年前の文化学演習では、学生への課題として、大学生活のなかで見つけた「ちょっとおかしなこと」を書き出すように求めました。
学生が提出した事例のなかで、愛 さん(愛=ちか という読み方に初めて接しました。なるほど愛するとは近づくことでもあります)が見つけた事例は、読んでその場面を想像するだけで思わずにやりと楽しくなるものでした。日頃からキャンパス内の隅々に、また学生たちの生態に目をこらしている眼力、ひいてはユーモア力の持ち主と見受けられました。この学生こそ文化学科の看板とする「多角的視野」をもつ存在ではないかとも思われました。
前置きはともかく、何題も出してくれた「ちょっとおかしなこと」のなかから3題再掲しますので、ユーモアの楽しさを味わってみてください。
気持ちが落ち込み後ろ向きに考え込み、眉をひそめて周りを見れば、暗くて嫌なことばかりが目につきます。反対に背筋を伸ばし前向き思考で眉を開いて見れば、そこには結構おもしろく楽しい世界が待っているものです。
ということで、8年前の文化学演習では、学生への課題として、大学生活のなかで見つけた「ちょっとおかしなこと」を書き出すように求めました。
学生が提出した事例のなかで、
前置きはともかく、何題も出してくれた「ちょっとおかしなこと」のなかから3題再掲しますので、ユーモアの楽しさを味わってみてください。
落書きといえば、前期のある授業の中で私も机上にメッセージを残してみた。 「私は誰でしょう?」 次の週、なんとそこには返事が…。 「机?」 その通りですね。 |
大学の昼休み。教室では、数多くのカップルが昼食をとっている。食べ終わった後の少しの時間も、二人は会話を楽しんでいる。 ある日のこと、あるカップルの彼氏が突然並んで座っていた席を離れ、そしてすぐに戻ってきた。 彼女が「どうしたの?」と聞く。 彼の答えた一言で、このカップルはまた一歩互いの距離を近づけることになった。 「個室が満室だった」 |
以上の
出す前から、勝負は決まっているようにも思われますが。もちろん、私の負けと。
ゼミの時間。コの字の席列の向こう正面に座っている男子学生の一人が、シャープ・ペンシルの芯を横の方に飛ばしてしまった。 それを見ていた私は、このときとばかりに間を置かずに言った。 「とんだことだったね!」 三十名ほどのゼミ生。そのうち数名しか笑わず…。 そこには、むなしい時間と空間があった。 |
教師をやっていて、授業中に退席する学生の多さには、いちいち腹を立てていてもきりがない。 それで、途中退室する学生には、その都度、皮肉っぽいメッセージをぶつけて見送ることにした。 「途中退席のひとには、授業料の払い戻しは致し兼ねます」 「途中退席は緊急の時以外は遠慮願います。ただし、親を死なすのは一度きりです」 こんな下手な文言は「ユーモア」を専門にしている立場としては決して言わない、代わりにことわざのもじり、「地口」を仕掛けてみる。 「立つ鳥、後は飛び落ちる」 「後悔、今立つ」 いずれも何の効果もなし。 皮肉が通じる相手ではなかった…。 |
大きな講義室、心理学の講義をいつものごとく淡々と進めている。 ふと受講席の方を見ると、ドアが開いていた講義室の入口から、大学の構内を根城にしている薄汚れた犬(学生は「福大犬」と呼んでいた)が入ってくる。 さらに受講席の間の通路をヨチヨチと教壇に向かって寄ってきて、教室の真ん中あたりで、ビクターのブランドの犬のように座り込んだ。聞く耳を側立てていかにも聴いているようにもみえる。私、教師の声、 ”voice of master” を…。 その犬の場違いな存在に気づいた学生は、ちょっとした笑いにどよめいた。 5分ほど授業を進めたあと、熱心な受講犬はどうしているかとその場所に目を向けると、はやその姿はなし。 「犬も喰わない」講義であった…。 |
以上の、長い福大での生活を振り返っての、おかしくも、ちょっとわびしい想い出をもって、髙下最後の教員エッセイを閉じます。
□髙下先生のブログ記事
・「かわいい」考□髙下先生の授業紹介
・文化学科ゼミ紹介
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