2016年12月21日水曜日

文化学科ゼミ紹介(LC14台 入船 佑 さん)

 今年度10回目の学生記事をお届けします。文化学科3年生の入船佑さんが、平田暢先生のゼミ(文化学演習Ⅲ・Ⅴ Ⅳ・Ⅵ)について報告してくれました。


平田ゼミ紹介
LC14台 入船 佑

 今年の平田先生のゼミでは前期・後期を通じて、自由について今一度考えるということを大きなテーマとしています。前期は、帝政を脱し様々な権利が憲法で保障されてより自由な国家となったヴァイマール共和国が、何故ナチスドイツとなってユダヤ人の大量虐殺に代表される非人道的な行為を多数行ったのか、ということを『ヒトラーとナチ・ドイツ』[石田勇治(著)、講談社現代新書]をテキストとして、歴史上の事実を確認しつつ議論しました。

 また後期では、なぜ人々がナチスやヒトラーを支持したのか、ヴァイマール共和国の人々が特例と言い切れるのか、異なった場所や時代を生きる私たちそれぞれが自由についてもう少し向き合い考える必要があるのではないか、ということを『自由からの逃走』[エーリッヒ・フロム(著)、日高六郎(訳)、東京創元社]をテキストとして考察しています。自由によってもたらされる孤独や不安に対し人間がどのような対応をとるのか、という問題を中心に自由に対するフロムの様々な指摘を踏まえて議論しています。

 ゼミは以下のように進められます。まず毎回二人一組になって担当範囲のレジュメを作成し報告し、報告者とその他の2名が検討課題を提示します。提示された計3つの検討課題を比較検討し、最終的には1つに絞って議論を深めます。

 たとえば、『自由からの逃走』第1章と第2章を扱った回では、「第1章でフロムは近代人が自由と同時に得た孤独が精神的な破滅をもたらすと述べているが、孤独によって引き起こされるどのような感情がそういった破滅をもたらすのか、また、近代人は自由を放棄してでも孤独を回避しようとするのか」という検討課題について議論しました。

 議論の結果、「孤独によって生まれた、所属する集団の他の構成員に対しての劣等感や疎外感、今まで意思決定の根拠としていたものの不在、他者の考えが分からなくなったことへの不安、そして孤独になる以前は他者と協力して解決していた問題に1人で立ち向かわなければならなくなったときの無力感といった感情が、人間に精神的な破滅をもたらしたり自由を放棄させたりするのではないか」という意見にまとまりました。



 二人一組で作業するため、テキストをしっかりと読み込んで連絡を密に取り合い意見の交換をきちんと行わなければ良いレジュメを作成することは困難です。また、その回のテーマに沿った検討課題を作成することもなかなか難しい作業です。なので、報告が中途半端であったり、良い課題が設定出来なかったりしたことで先生からご指導をいただく回もあります。しかし、いただいた指導は次回の資料作成に活かすことが出来ますし、またその二つが上手くいった回の議論は上で示したように意義のあるものとなります。

 自由という私たちの身近にあるものについて一度立ち止まって考えてみることは、これから生きていく上で大切なことです。また、あまり面識のない同級生や上級生と一緒に作業をすること、そして課題を見つけることは、成功・失敗を問わず社会人になった時に活きる経験だと考えます。




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