2012年度入学の小倉望未さんに、再び文化学基礎論に潜入してもらいました。
こんにちは! 文化学科四年生の小倉望未です。6月18日の文化学基礎論で、私の昨年観た映画ナンバー1を勝ち取った映画が資料に使われることを聞きつけ、眠い目を擦りつつ、寝坊で化粧をし損なった顔をマスクで隠しつつ、1限の講義へ潜入してきましたので、今回はその模様をお届けしようと思います!
今回の文化学基礎論は、時間論の平井靖史先生がゲストとして招かれ、講義をしてくださいました。今日の平井先生は黄色いシャツに黄色の腕時計をあわせていました! きょうも先生はとってもおしゃれです! 対して、小笠原先生はきょうも真っ黒……。
「幸せってなんだと思いますか?」
そんな問いから講義が始まりました。当てられた人が思い思いの答えを口にします。今の生活に満足していること、友人と遊ぶこと、家族といること、寝ること、ごはんを食べること……。どれも、ああ分かる、と共感できる答えですね。でも、実は、平井先生の問いと、挙げられた答えは、すこしのずれが生じていました。そのずれは、外延と内包の違いでした。
皆の答えは、どれも、「どういうときに幸せか」という具体例でした。平井先生が聞き出そうとしたのは、内包、定義を条件付ける要素だったのです。そこで、外延から抽象化した内包を取り出す作業を皆でしてみることに。具体例から共通項を見つけたり、具体例とその他のものを比較したりすると、内包が段々と見えてきます。満足していること、ひとりじゃないこと、当たり前のことができる、など、いくつかの幸せの要素が見つかりました。幸せ、それ自体が抽象的かもしれませんが、それを言葉にするということが大事だと平井先生は仰いました。
ここで、続いての問いです。「もしタイムトラベルが出来たなら、なにをするか?」
なにをしましょう? 私は、もしタイムトラベルができたなら、ケーキバイキングのスタートのときに何度も戻りたいです。スタートはとてもワクワクしているのに、終わると食べ過ぎて苦しくていつも後悔してしまうので……。他の人も、間違った行為を正す、だとか、楽しかったときに戻る、といった意見を挙げていました。
ここで、映画『アバウト・タイム』が資料として登場しました。この映画の主人公のティムは、21歳のとき、父親からティムがタイムトラベルが出来ることを告げられます。そして、冴えない男だったティムは、恋人をゲットするためにタイムトラベルの能力を使い始めるのです。
以下、映画のネタバレになってしまう怖れがありますので、もし映画に興味をもって下さった方がいましたら、先に映画を観られることをお勧めします。私の昨年の映画ナンバー1なので是非!
映画の終盤で、ティムは父親から、幸せになる秘訣を教えられます。
①ふつうに1日を送ること。
②もう一度、同じ1日を送ること。
父親が、彼に教えたのはこのふたつのルールだけです。
ティムは、タイムトラベルを習得してから、なにか失敗するごとに過去に戻っていました。でも、そうではなく、父親の助言に従って、1日をタイムトラベルをすることなくふつうに過ごし、そして、1日の終わりに、1日分だけ巻き戻って、同じ1日をもう一度過ごすようにしたのです。そうすると、彼は、つまらなかった1日のなかに、どれ程の見落としがあったのか気付き、世界がどんなに素晴らしいものか知ることができたのです。
そんな生き方を知りながら、ティムは、一度しか経験したくない1日だってある、と言います。タイムトラベルができたって、避けられない現実、不幸は必ずあるのです。
世の中にはタイムトラベルが出来ない人ばかりだと思います。だから、実際は考えるだけです。もし、あのとき、こうしていたら。どうせ考えることしか出来ないので、幸せになるコースを考えます。いま不幸であるなら、違うコースに進んだ人生を考えます。
それは当然のことのように思えますが、そうじゃない考え方を、平井先生が紹介されました。資料として渡されたのは、2003年1月4日の朝日新聞の記事でした。見出しは「お父さんの死 いつか読んで」。米国同時多発テロで、旦那さんを亡くされた女性が、そのとき、その後に感じたことを言葉にした本が出版されたという記事です。本では、旦那さんに綴られた手紙があり、そこには「テロで貴方を亡くすと分かっていても、もう一度結婚することを選ぶ」という内容のことが、彼女の言葉で綴られているそうです。
ちょっとした失敗があると、必ずといっていい程、ああしていればよかった、とついつい思ってしまいます。そう思うのだから、辛い現実が起こることを知っているのなら、絶対に、それに遭わない道を選ぶようにするでしょう。
平井先生の、最後の問いが出されました。「最愛の人の命が、理不尽な理由で突然奪われてしまったとき、なにを思うのだろうか?」「もう一度同じ道がいいと思うのなら、それはなぜだろうか?」
その問い掛けに、教室が静寂に包まれたのを感じました。真っ直ぐに胸にくる問い掛けは、きっと教室中の全員から、不用意な言葉を奪ったのでしょう。それぞれが、問いを噛み締め、答えを模索している様子に、「これは宿題にしましょう」と平井先生が声を掛けられて授業は終わりとなりました。
平井先生は、時間論のご専門の先生として、タイムトラベルはないものだと仰います。それでも、きょうという1日が、タイムトラベルによって繰り返された二度目のきょうだと思って過ごすと、すこしばかりきのうより、発見があるのかもしれません。「きょうもまた同じ1日が……」と小笠原先生のぼやく声が耳に届きましたが、先生が素晴らしい1日だったと思いながら眠りについていればいいなあと思いつつ、いまこの文章を書いています。
さて、きょうという1日もそろそろ終わりますので、また朝に戻って、世界の素晴らしさを見つけて生きられればと思います。おやすみなさい。
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