2020年1月12日日曜日

チップをモデルで考える

LC18台 福田 一葉

 海外旅行に行く際、ガイドブックなどで「チップ」について述べられていることがある。この「チップ」というものが日本にない概念であるからだと考えられる。そのため、人によってこの「チップ」に対して捉え方が異なっているようである。



このような考えに至ったのは、私の家族旅行での経験がある。父の趣味が旅行なので、海外へ何度も一緒に行くが、父はレストランの会計のときやタクシーを使ったときなど、チップとして数ドルを渡す。一方で、母はチップの必要性を感じていないのか、チップを払うことに否定的であった。

 「チップ(tip)」とは、「サービスや芸などに対する慰労や感謝の気持ちとして与える少額の金。心付け。祝儀。」を指す。(デジタル大辞泉)

 ここで、合理的意思決定のモデル(人が不確実な事柄を含む選択をするときの原理や原則を定型化したもの)を使って、チップを払う理由を探ろうと思う。モデルとは、現実にあるものやあると考えられるものの特徴を単純化して表現したものである。チップの歴史やどのような扱いがされているかは、様々なサイトで紹介されているため、特段ここで取り上げない。

また、今回は、ホテルでのチップに限定する。
 海外でホテルにて連泊する際に、チップを払うことが合理的である条件を求める。
 十分なサービスが得られるときの効用:U1
    :ホコリが窓枠にたまってない、シーツにしわがない、不備がない
 十分なサービスが得られないときの効用:U2
     :新しいアニメティが足りない、しみや破れている箇所が見える場所にある、ものやお金が盗られている可能性がある
  U1U2を比べたとき、U1の方がえられる効用が大きいとする。  
U1>U2
 チップを払うときのコスト:C
 チップを払わないときのコスト:0 
 チップを払うとき、十分なサービスが得られる確率:p
 チップを払うとき、十分なサービスが得られない確率:1-
      0<p<1
 チップを払わないとき、十分なサービスが得られる確率:q
 チップを払わないとき、十分なサービスが得られない確率:1-q
      0<q<1
  
チップを払ったとき
  p →十分なサービスが得られる:U-
  1-p →十分なサービスが得られない:U2-
チップを払わないとき  
    q   →十分なサービスが得られる:U1
    1-q →十分なサービスが得られない:U2
 
 チップを払ったとき、複数回おこなった場合、平均して得られる効用は、
 EU(払う)=(一回行ったとき、十分なサービスが得られたときの効用)×(発生する確率)+(一回行ったとき、十分なサービスが得られたときの効用)×(発生する確率)
=(U1-C)+(U2-C)(1-p)
      =(U1-U2)+U2-C

 チップを払わないとき、複数回おこなった場合、平均して得られる効用は、上記と同じように考えて、
 EU(払わない)=U1・q+U2(1-q)
       =(U1-U2)+U2

 チップを払うことが合理的になるのは、チップを払うときの効用が払わないときよりも大きいときである。
 EU(払う)>EU(払わない)
 EU(払う)-EU(払わない)>
 (U1-U2)+U2--(U1-U2)+U2>
 (U1-U2)(p-q)->
  

よって、ホテルでチップを払うことが合理的であると考えられる条件は、
  左辺が大きい場合:p-
  :チップを払うとき、払わないときよりも十分なサービスが得られる確率がはるかに高い場合
  :潔癖症の気がある場合

  右辺の分子が小さい場合:C
  :チップのコストが小さい場合 
  :払う金額が少ない場合、現状よりも清潔感を求める場合

  右辺の分母が大きい場合:U1-U2 
     :十分なサービスが得られるとときの効用が、得られないときよりもはるかに大きい場合
:よりきれいな部屋になるとみられる場合
 
 上記のモデルのように社会現象を捉えることが可能である。このようにモデルを用いて、社会現象を考えることは、その現象を俯瞰してみることが可能になり、今まで気づかなかった問題点や視点を見つけることが可能になる。

 文化学科では、多角的な視点から物事を見ることを求められる。様々な要素が入り交じった事柄を考える必要があるとき、モデルは整理する手助けになってくれるのではないだろうか。

参考資料
デジタル大辞泉(2019/5/15)「チップ(tip)」小学館(20196月2日閲覧)
https://japanknowledge-com.ezproxy.lib.fukuoka-u.ac.jp/lib/display/?lid=2001011915800

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