2016年9月1日木曜日

私のゼミについて (岸根敏幸先生)

「教員記事」をお届けします。2016年度第7回目は、岸根敏幸先生です。



私のゼミについて

岸根敏幸(宗教学)

 文化学科にはすべての教員が担当する「文化学演習」(以下、「ゼミ」と呼びます)という少人数制の授業があります。この授業をどのようにおこなうかは担当教員によって様々であり、たとえばテキストを輪読したり、通常の講義とほぼ同じような講義をしたり、グループに分かれて発表やディベートをしたり、共同でなにかを制作したりと、色々な形があろうかと思います。私のゼミでは従来、日本神話に関連した課題を学生にあらかじめ割り当てて、一回の授業を一人で(場合によっては二人共同で)担当してもらい、発表とそのあとの質疑応答に対応してもらう、という形をとってきました。発表が不十分で、出席者が質問するのをためらってしまうような場合もありましたが、しっかり準備がなされた発表の場合、そのあとの質疑応答も充実していたように記憶しています。

 このようなゼミに取り立てて不足を感じていなかったため、これまで長く続けてきたわけですが、数年前から別の形に改めた方がよいのではないかと思うようにもなりました。その大きな理由として、学生は自分に割り当てられた発表については一生懸命調べ、発表資料を作成してくるのですが、他の人の発表に対しては、必ずしも十分な予習をしていない、ひどい場合には、なにも予習をしてこないことさえあるという点が挙げられます。自分の発表さえ乗り切れば、あとは質疑応答に加わって、発表者が作った配布資料を見ながら、それなりに発言すれば、ゼミの時間をやり過ごすことができてしまうのです。たとえ一度であっても、きちんと準備をして発表し、質疑応答にも責任をもって対応できたならば、それでよしとするという考え方もあるでしょうが、様々な事柄に注目しながら、日本神話についてより深く探究してゆくという私のゼミの目的からすると、割り当てられた一つの事柄だけを調べればいいというわけでないのです。

ゼミ写真 1

 また、このこととは直接関係しませんが、人文学部の学生に対するアンケート調査結果によると、文化学科の学生は他学科の学生に比べて、授業に対する準備学習の時間が著しく少ないという実態が浮かび上がっています。他学科とは異なり、文化学科の場合、特定の専門分野を積み上げてゆくようなカリキュラムにはなっていないため、それほど準備学習をしなくても、授業を乗り切れてしまう側面があることは否めません。しかし、それぞれの授業には、長年そのような研究に従事したことによって得られる面白さがあるはずであり、それをある程度理解するためには、やはり十分な準備学習をしてもらうという方向性が必要となるでしょう。

ゼミ写真 2
 ゼミの問題に加えて、以上のような文化学科が抱える問題もあって、ここ数年、どのような形でゼミをおこなったらよいのか思案していました。たとえばテキストを毎回の授業で少しずつ輪読してゆくという形をとれば、すべての学生が予習や復習をしてくるという点はクリアできるでしょうが、ゼミでテキストを読むというのは、私としてはどうも性に合わないので、踏み切れませんでした。そして、ようやくたどり着いたのが、今年度からおこなっている形です。それは、あらかじめ通知した授業の課題について、すべての学生が調査、および、問題の考察をおこなっておき、それを前提にして、授業で議論し、さらに理解を深めてゆくというものです。

 この形のゼミでは特定の学生が資料を配布して発表することはありませんので(ただし、熱心な学生が当日、自発的に資料を配布して、意見などを発表することは構いませんが)、自分で課題についてきちんと調べておかないと、議論についてゆくことはできないでしょうし、また、その課題について単に調べるだけではなく、どのような問題が存在するのかということを考えておかないと、議論を方向づけたり、展開させたりすることはできないでしょう。このように調査と考察を前提にしながら、議論の場において積極的に発言することがこのゼミでは強く求められるのです。成績評価もこの一点のみに重点を置いており、しっかりした準備学習に基づいて、議論で積極的に発言する学生は高く評価されるでしょうが、ただ単に座って、貝のように口を閉ざしている学生は、たとえ半年間すべての授業に出席したとしても、次年度に再履修という憂き目に遭うかもしれません。

 このようにして、15名の学生からなる私のゼミでは、前期に11の課題をめぐって議論をおこなってきました。扱った課題はつぎのようなものです。

①スサノヲ、②黄泉つ国、③サチ、④古語拾遺、⑤天つ神と国つ神、⑥失われた釣り針型神話、⑦トンボ、⑧オノゴロ嶋、⑨神の姿形、⑩三種の神器、⑪南九州の四神宮。
※ どの課題も正式には「日本神話における<課題>」または「日本神話と<課題>」という形になります。

 授業に先立つガイダンスでは、ゼミ用の準備学習ノートを用意し、予め通知した課題ごとに、自分で調査したことや考察したことを随時、書き記しておくようにアドバイスしました。ほとんどの学生がそのようなノートを用意して、授業に臨んでいます。

ゼミ写真 3
 半年間を振り返ってみると、議論がうまくいったときもあれば、そうでなかったときもありました。また時には、本来、黒衣(くろご)に徹すべき私がそのおしゃべりな性格と議論を盛り上げようとする過分な配慮から、熱弁を振るってしまうこともしばしばありました。課題についても、活発な議論ができるようにもう少し工夫すべき点があるでしょう。全体として改善の余地はまだまだありますが、様々な事柄に注目しながら、日本神話についてより深く探究してゆくという、私のゼミで掲げている目的に向けて歩みを進めることができたのではないかと思います。ということで、今後も引き続き、このような形でゼミをおこなってゆくつもりです。日本神話について深く探究したいと思う意欲的な学生はぜひとも私のゼミへ。

□岸根先生のブログ記事

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