午前の部では、まず文化人類学者の宮岡先生が「『食べ物』を考える―文化人類学の視点から」と題して、南西諸島や台湾先住民村落のフィールドでの経験をもとに、「ヒト/人にとっての食」の特徴や補食文化の現況について講義をしてくださいました。次に、岩隈先生が「肉食の是非について―動物の『道徳的資格』を問いなおす動物解放論」と題して、応用倫理学者のピーター・シンガーの議論を紹介しながら、動物を食すことの是非について環境倫理・生命倫理の視点から講義をしてくださいました。最後に、岸根先生が「日本神話における『食』」と題して、神話学・宗教学の立場から日本神話に登場する食物神や、稲の神による葦原の中つ国の統治について講義をしてくださいました。
3人の先生方の課題は、「食文化の比較的視座から、私達が『食べ物』と考えている範囲についてまとめてみよう」(宮岡先生)、「動物を食べることは許されるのか、食べても良い種類と食べてはいけない種類の区別はあるのか、その理由・根拠を考えよう」(岩隈先生)、「新嘗祭・大嘗祭が行われる意味について考えよう」(岸根先生)というものでした。
講義・グループ別発表・質疑の様子 |
午後は各グループが図書館のグループ学習室やラーニング・コモンズで、2時間以上議論や文献検討を重ね、発表の準備を行いました。その後の発表では、どのグループも議論の内容を論理的でわかりやすい発表に結びつけるために、模造紙の図を用いるなど、工夫を凝らしていました。ただ、文化や時代によって食べる/食べられる動物の範囲は変わるという表層的で相対主義的な発表に留まっているグループもありました。個別の質疑では、「遭難した時に私を食べますか?」というフロアからの問いかけと、「食い意地が張っているので食べます」という個人的な水準の回答が繰り返されるなど、午前中に聴講した専門的な講義内容を踏まえて取り組んだ発表が、的確に学問や思想の中に位置づけられているか、グループ内で積み上げた議論をうまく発表や質疑に生かせているかという点では、やや課題も残ったように思います。
しかし、最後の全体討議では、「緊急避難として人を食べることは許されるか」(ひかりごけ事件)や、「愛するゆえに食べるのか」「可愛い動物は食べられないのか」など、様々な論点が提示され、アシスタントの上級生も交えて白熱した議論が展開されました。集合写真撮影時には発表をやり遂げた新入生の充実した表情が印象的でした。
文化学科のコンセプトは、「文化の多角的・総合的理解」です。1年次の基礎演習や2~4年次の文化学演習などの少人数ゼミを通じて、他者と論理的に議論することに慣れ、自身の意見と他者の意見を共振させていくプロセスを学べば、よりインタラクティブな形で、倫理学・宗教学・人類学の理論や視座を踏まえた厚みのある議論を展開することが出来るのではないかと思います。今後の大学での学修を通じて、学生各自が領域横断的で専門性のある自身の答えを築き上げてくれることを願っています。
新入生とアシスタント学生・若手教員で記念撮影 |
ゼミナール終了後は、文系センター棟16階スカイラウンジに場所を移し、恒例の新入生歓迎会(LCフォーラム主催・立食パーティー)が実施されました。LCフォーラム会長の高下先生の挨拶で会が始まり、あちこちで和やかな歓談の輪が広がりました。
歓談する新入生と教員 |
最後になりますが、新入生を惹きつける講義をしてくださった宮岡先生・岩隈先生・岸根先生、新入生全員の名札を作ってくださった高下先生、備品準備・ポスター・教員名札製作・写真撮影の労を執ってくださった平田先生、新入生歓迎会の準備をしてくださった鴨川先生、お手伝いをしていただいた学生の皆さん(田中里佳さん、植村日和さん、井上拓海くん、糸濱正晶くん、黒岩美咲さん、日隈美有希さん、船間あさひさん、本田愛梨沙さん)に心より感謝申し上げます。
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