2020年2月8日土曜日

えむえむのこと

「教員記事」をお届けします。今回の寄稿者は、近現代フランス哲学の平井靖史先生です。



 こんにちは。哲学担当の平井です。

 今回は「えむえむ」のことを書こうと思います。「えむえむ」というのは僕が2015年夏からやっている課外の勉強会の名前です。僕が専門にしているフランスの哲学者、アンリ・ベルクソンの主著『物質と記憶』を読み進めながら議論したり関連することを勉強したりする集まりです。書名がフランス語でMatière et mémoireと言い、その頭文字をとってMMです。ちなみに英語でもMatter and MemoryなのでMMです。

  歴代の参加者を見ると、人文学部文化学科に限らずいろいろです。発起人の一人は当時九州産業大学の学生でした。佐賀大学や社会人、福大の大学院生の参加者もいました。現在も、文化学科以外に工学部から二名、九州産業大学から一名、そして大学院進学希望の卒業生が参加してくれています。

 普段は週に一回、18時から20時まで二時間。基本的には一回ひと段落をめどに担当者がレジュメを用意して、いろんな分野の研究を参考にしながら、ホワイトボードや黒板を使って、概念を触りながら理解を作っていきます。

 『物質と記憶』は一言で言うと「心身問題を時間論で解く」という書物なのですが、生物進化の話、エナクティブな身体論、失語や失認などの病理学、イメージ投射による認知説、記憶の粒度可変モデル、汎質論、マルチスケールの時間論など、多くの論点が絡み合っているので、楽しく知識を広げながら世界と心の関係について思考の手探りを続けています。じっさい、みんなの頭を使っても頭が足りないこともしばしば(笑)。でも、うまくいくと議論全体の解像度が一気に上がるということが起きてテンションが上がります。ピザとります。

 夏休みや春休みには、特別編として集中入門的なコースを開いたり、テーマ別発表をしたり。フランスやイギリスの出張から戻ったら、お土産を囲んで研究発表の話を紹介したり。課外で行なっている自主的な勉強会なので、別に単位が出るわけでもないですが、それでも今まで途絶えることなく続いてくれているのは、参加者の皆さんの熱意の賜物です。

138億年前に起きたビッグバン。宇宙が冷えて、星ができて、地上に生命が生まれて幾年月。意識なんていうヘンテコなものは、なんでできたんですか。どんな時間の結び目に意識は芽生えたんですか。

こんなコアな哲学的課題の一部を、さまざまなバックグラウンドを持つメンバーと分かち合えることは、僕にとっても掛け替えのない財産です。いつもありがとう。



※写真はすべて平井によるもの。

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